生成AIに何度も同じ説明をしているのに、文章の雰囲気や回答の詳しさが合わない。以前伝えた条件が、別の会話では反映されない。このような経験はありませんか。

生成AIを自分仕様にするには、繰り返し使う指示、今回だけの条件、参照する資料を分けて渡すことが大切です。さらに、保存機能の適用範囲を確認すると、毎回の説明や修正を減らしやすくなります。

この記事では、カスタム指示・メモリ・資料参照の違いと、文章作成や学習支援に合わせて設定する手順を紹介します。具体例として、保護者向けのお知らせを作るAIの設定を考えていきましょう。

目次

1.生成AIを「自分仕様にする」とは?

AIのパーソナライズとは、利用目的や好みに合う回答を得られるよう、指示や参照情報を調整することです。例えば、「専門用語には説明を添える」「文章は2〜3文を一つの段落にする」といった条件を設定します。

ここで区別したいのが、回答に使う情報を調整することと、モデル自体を追加学習することです。会話の中で修正を伝えたからといって、その場でモデルの内部パラメーターが自分専用に更新されたと判断することはできません。

会話・設定・メモリ・資料参照の違い

仕組み 主な役割 確認すること
会話内の指示 今回の目的や修正内容を伝える 別の会話でも引き継がれるかは、別途確認する
カスタム指示・プロジェクトの指示 繰り返し使う役割や出力ルールを設定する 全体に適用されるか、特定の作業だけに適用されるか
メモリ・過去の会話の参照 保存された情報や過去のやり取りを回答に利用する 保存対象、参照範囲、編集・削除方法
ファイル参照・RAG 渡した資料や検索した文書を回答の材料にする 実際に参照できた範囲と資料の更新日
ファインチューニング 学習用データを使ってモデルを追加学習する 対応モデル、データの準備、評価や運用の負担

これらの機能は、AIサービスや利用プランによって異なります。すべてのサービスに同じ名前・同じ範囲の機能があるわけではないため、利用中の設定画面や公式ヘルプを確認してください。

日常的な文章作成や学習支援なら、まずは指示と資料の整理から試せます。最初から追加学習や専用システムの開発まで行う必要はありません。

2.設定を始める前に、任せたい作業を一つ決める

最初に「何でも助けてくれるAI」を目指すと、指示が増え、何が改善されたか分かりにくくなります。まずは、繰り返し行っている作業を一つ選びましょう。

例えば、保護者向けのお知らせ、学習内容の確認問題、ブログ記事の下書きなどです。作業を決めたら、読み手と完成条件も書き出します。

決める項目 保護者向けのお知らせの例
任せる作業 確認済みの開催情報から案内文の下書きを作る
読み手 塾に通う生徒の保護者
文章の条件 丁寧な表現にし、内容のまとまりごとに段落を分ける
必須情報 対象、日時、場所、持ち物、申込方法
不足時の対応 推測で補わず、確認事項として示す
人が確認する部分 日時、料金、対象者、申込先、公開してよい内容か

「経験豊富な講師として答えて」と役割を指定するだけでは、完成条件までは伝わりません。何を含め、どのように示し、何を補ってはいけないかまで具体化すると、修正の基準も作れます。

3.いつも使う指示と、今回だけの条件を分ける

共通の指示には、変わりにくい好みを入れる

繰り返し使う指示には、言語、説明の詳しさ、文章の構成などを登録します。ただし、すべての会話に適用する設定へ、特定の業務だけで必要なルールを詰め込みすぎないようにしましょう。

例えば、「日本語で説明する」は広い用途で使えますが、「保護者向けの案内文として書く」は対象の作業に限った条件です。用途ごとに指示を分けられる機能があれば、その範囲へ設定します。

Claudeには全体に適用する指示とプロジェクト内の指示があり、GeminiのGemでは用途に合わせたカスタム指示を作成できます。名称だけで判断せず、どの会話に反映される設定なのかを確認してください。

文章作成に使う指示の例

以下は、文章作成用の設定例です。すべてをそのまま登録する必要はなく、自分が繰り返し修正している点に合わせて調整してください。

【用途】
読者に伝わる文章の下書きと修正を補助してください。

【文章の書き方】
・日本語の丁寧な表現を使う。
・最初に要点を示し、その後に説明や具体例を続ける。
・通常の説明は2〜3文を一つの段落にまとめる。
・話題が変わるところで段落を分ける。
・専門用語には、読み手に必要な説明を添える。

【情報の扱い】
・提供した事実と、提案や推測を区別する。
・数値、日付、固有名詞を推測で補わない。
・確認できない情報は、その旨を示す。

【今回の依頼との関係】
今回だけ異なる形式が必要な場合は、依頼文に記載します。条件が両立せず、結果に影響する場合は確認してください。

「必ず短く」と「すべて詳しく」のように、両立しにくい指示を重ねると、期待する結果が曖昧になります。説明の長さは読み手や用途に応じて指定し、不要になった条件は削除しましょう。

日時や料金は、今回の依頼で渡す

開催日や料金など、変わる可能性がある情報は、今回使う資料や依頼文にまとめます。以前の会話に書いたという理由だけで、今回も正しい情報が使われるとは考えないことが大切です。

【今回の作業】
以下の確認済み情報を使い、保護者向けのお知らせを作成してください。

【確認済み情報】
・行事名:
・対象:
・日時:
・場所:
・持ち物:
・料金:
・申込方法:
※使用前に、今回の正しい情報を記入します。

【出力形式】
件名、本文、公開前の確認事項の順に示してください。本文は内容のまとまりごとに段落を分けてください。

【不足情報への対応】
空欄や曖昧な項目は推測せず、確認事項へ分けてください。本文に仮の情報を入れる場合は、未確定と分かる表記にしてください。

4.フィードバックは、次に直す内容を具体的に伝える

回答が合わないときは、「もっとよくして」だけでなく、どの部分をどう変えるか伝えましょう。残したい部分も指定すると、不要な全面修正を避けやすくなります。

例えば、「日時と持ち物の一覧は残し、冒頭の説明を短くする」「一文ごとの改行を減らし、内容がつながる2〜3文を一つの段落にする」といった伝え方です。好みを、確認できる条件へ置き換えるのがポイントです。

修正指示の例

日時と持ち物の一覧は、そのまま残してください。冒頭の説明が長いため、参加目的が伝わる2文程度に短くしてください。

本文は一文ごとに段落を分けず、関連する2〜3文をまとめてください。新しい情報や、効果を断定する表現は追加しないでください。

修正後の本文と、変更した点を示してください。

お礼や肯定的な言葉を伝えること自体に問題はありません。ただし、「褒めればモデルが自分専用に学習する」と考えるより、何がよかったのかを明示するほうが、再利用できる指示になります。

繰り返し使いたい修正条件が見つかったら、保存する指示にも反映します。「この会話で伝えたから、今後すべての会話に適用される」とは限らないためです。

5.メモリと資料参照を、目的に合わせて使う

メモリには、保存内容を確認する習慣をつける

メモリは、利用者に関する情報などを保存し、後の回答へ利用するための機能です。保存対象や参照方法はサービスによって異なり、過去の会話をすべて正確に再現する仕組みとは限りません。

利用する場合は、古い役割や不要になった好みが残っていないか確認しましょう。重要な作業条件は、メモリに任せきりにせず、今回の依頼にも明記します。

また、会話履歴とメモリが別に管理されるサービスでは、会話を削除しても保存された情報が残る場合があります。例えばClaudeでは、会話から作られたメモリの削除は、会話そのものの削除とは別に確認が必要です。

資料参照は、モデルの追加学習と区別する

社内規程や過去の記事を参考にしたい場合は、必要な資料を渡して回答に利用させます。ファイルを添付したことだけを根拠に、その内容がモデルへ恒久的に学習されたと考えることはできません。

RAGは、関連する資料を検索で取得し、回答生成に利用する仕組みです。資料の内容をそのまま入力へ含める方法もあり、ファイルを添付する機能がすべて同じRAG方式で動くわけではありません。

資料の版と、実際に参照した箇所を確かめる

資料には、文書名、更新日、対象期間を付けて管理しましょう。似た名前の旧版と新版が混在すると、どの情報を使うべきか分かりにくくなります。

回答には参照した文書名や該当箇所を示すよう依頼し、必要な部分を人が照合します。出典らしい表示が付いていても、それだけで記述の正確さが保証されるわけではありません。

  • 今回使う資料と、使わない旧版を区別する。
  • 資料にない事項は、確認できないと示すよう依頼する。
  • 参照元が開けるか、該当箇所が回答を裏付けるか確認する。
  • 外部連携では、アクセス権限や更新の反映状況を確認する。

クラウドストレージへ接続した場合も、常に最新の全資料を取得できるとは限りません。重要な判断に使うときは、回答の基になった資料とその版まで確かめてください。

6.設定の効果は、新しい会話と複数の依頼で確認する

設定を変更したら、実際の用途に近い依頼で試します。同じ会話内の修正がうまくいっただけでは、保存した設定が別の会話でも働くかまでは判断できません。

対象の設定が適用される場所で新しい会話を始め、似た作業を試してみましょう。メモリや過去の会話の参照を利用している場合は、その有無も記録すると原因を整理しやすくなります。

試す依頼 確認すること
必要な情報がそろった案内文 必須項目が入り、指定した段落構成になっているか
開催場所が未確定の案内文 場所を勝手に補わず、確認事項として示すか
今回だけ短文を求める依頼 共通の好みと今回の条件を適切に扱えるか
日付を変更した案内文 以前の日付が混ざらず、今回の情報を使うか
別の種類のお知らせ 一つの例だけでなく、別の依頼でも役立つか

これは設定を点検するための例であり、決まった数のテストに通れば十分という基準ではありません。文章の好みだけでなく、事実の正確さや不足情報の扱いも確認しましょう。

改善するときは、指示を一度に大きく変えず、問題に関係する部分から調整します。修正の回数や公開前の確認時間が減ったかも記録すると、実務で役立っているか判断できます。

💡 あわせて読みたい関連記事

設定を整えても、用途によって使いやすいAIは変わります。自分の作業に合うモデルを、回答品質や修正の手間から比較する手順を紹介しています。

AIモデルの選び方|ベンチマークの読み方と仕事・学習で比較する手順 記事を読む →

7.自分仕様にするときも、渡す情報を必要な範囲に絞る

自分に合う回答を得るために、個人情報や社内資料を大量に登録する必要はありません。まずは「誰に向けた文章か」「どの形式がよいか」など、作業に必要な条件から設定しましょう。

例えば、案内文の作成手順を試すだけなら、実在する生徒の氏名や成績は不要です。架空の情報や公開済みの資料で試してから、実務で扱える範囲を確認します。

  • 組織の情報は、利用が認められたサービスとアカウントで扱う。
  • モデルの学習への利用と、保存・削除の条件を分けて確認する。
  • パスワードやAPIキーを、指示や参考資料へ登録しない。
  • 共有するプロジェクトや設定では、他の利用者に見える範囲を確認する。
  • 外部連携は、必要な情報へアクセスできる範囲に絞る。

「秘密を漏らさないで」と指示することだけで、情報管理が完了するわけではありません。入力する情報、保存先、共有範囲、外部サービスへの接続を、それぞれ確認してください。

💡 あわせて読みたい関連記事

社内資料や外部ツールをAIへ接続する前に、入力できる情報と許可する操作を整理しましょう。情報漏洩や権限管理の基本を解説しています。

生成AIのセキュリティ対策|情報漏洩・プロンプトインジェクション・権限管理の基本 記事を読む →

8.AIのパーソナライズに関するよくある質問

毎日話しかけないと、自分向けの設定が失われますか?

対話を続けないことだけを理由に、保存した設定が失われるとは限りません。毎日使うことより、利用する機能の保存条件と、設定が現在の用途に合っているかを確認することが大切です。

「覚えておいて」と伝えれば、次の会話でも使われますか?

メモリ機能の有無や設定、保存対象によって異なります。重要な条件は設定画面などで保存を確認し、次の作業でも確実に必要な情報は、その依頼にも記載してください。

好みの文章を渡せば、同じように書けますか?

参考例は、語調や構成を伝える材料になります。ただし、「段落の長さを参考にする」「事実や固有名詞は今回の資料を使う」のように、どこを参考にするか指定すると、不要な内容の混入を確認しやすくなります。

指示は詳しく長く書くほどよいですか?

長さだけでは決まりません。現在の作業に必要な条件を優先し、重複や矛盾を減らしてください。一度限りの条件まで保存し続けると、別の作業に合わなくなる場合があります。

AIに「設定を保存しました」と言われれば十分ですか?

会話内の返答だけで、保存先や適用範囲まで確認できたとは限りません。サービスが提供する設定画面や保存状態を確認し、新しい会話でも期待する動作になるか試しましょう。

9.まずは、繰り返し修正している条件を整理する

AIを自分仕様にする第一歩は、普段の修正内容を見直すことです。「説明が長い」「段落が細かすぎる」「未確定の情報を補ってしまう」など、繰り返し気になる点を書き出してみてください。

その中から共通して使う条件を設定へ入れ、今回だけの情報は依頼文へ分けます。資料が必要な作業では、参照元と更新日も添えて渡しましょう。

  • 任せる作業と、完成条件を一つ決める。
  • 共通の指示と、用途ごとの指示を分ける。
  • 日付や料金などの変動する情報は、今回の依頼で渡す。
  • 回答への修正は、残す部分と変える部分を明示する。
  • 新しい会話でも、設定が役立つか確認する。
  • 不要なメモリや古い資料、使わない指示を整理する。

目指すのは、必要な条件を伝えやすく、回答を確認しやすい使い方です。一つの作業で設定と検証を繰り返し、役立った指示をほかの用途にも応用していきましょう。

参考資料

パーソナライズ機能の範囲や資料参照の考え方について、以下を参照しています。機能名、利用条件、保存・削除の方法は変更されることがあるため、実際に使う際は各サービスの公式説明を確認してください。

Learning Tools

記事を検索したい方はここから!

辞書から探す

本文中で気になった概念やキーワードを、辞書ページで一覧から確認できます。

辞書を見る