【徹底分析】日本のエンジニア給与はなぜ低い?海外需要と今後の生存戦略
「日本のエンジニアは世界的に見て給与が低いのではないか?」「このまま国内案件だけをこなし続けて、将来は大丈夫なのだろうか?」
近年、円安の影響やグローバルなIT人材獲得競争の激化により、このような不安を抱くエンジニアが増えています。経済産業省の予測でもIT人材の不足は深刻化するとされていますが、それが必ずしも「個人の給与アップ」に直結していないのが日本の現状です。
この記事では、日本のエンジニア市場の構造的な課題と海外市場との比較を通じて、今後エンジニアとして生き残るために必要な戦略を具体的に解説します。単に「海外へ行こう」という話ではなく、日本に住みながら市場価値を高める方法や、リスクヘッジとしてのキャリア形成についても深掘りしていきます。
目次
1. 日本のエンジニア需要と給与のリアルな現状
まず、日本国内におけるエンジニアの立ち位置を冷静に見つめ直してみましょう。「人手不足」と言われながらも、なぜ給与が爆発的に上がらないのか、その背景には構造的な要因があります。
需要は高いが「質」の変化が起きている
日本国内のエンジニア需要は依然として高い水準にあります。DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進により、非IT企業でも内製化の動きが進んでいるためです。しかし、求められる人材の質は二極化しています。
- 高需要・高単価: AI活用、クラウドネイティブ設計、プロジェクトマネジメント、ビジネス課題を技術で解決できる層
- 需要減・低単価: 詳細設計書通りにコードを書くだけのプログラマー、古い技術スタックのみに依存している層
かつては「作れば売れる」時代でしたが、現在は「ビジネス価値をどう生むか」が問われています。単なるコーディング作業は、オフショア開発やノーコードツール、そして生成AIへと置き換わりつつあります。
給与が上がりにくい構造的要因
日本のエンジニア給与が欧米に比べて低いとされる主な理由の一つに、SIer(システムインテグレーター)を中心とした多重下請け構造が挙げられます。
発注元からエンドユーザーに届くまでに、1次請け、2次請け、3次請け……と企業が介在することで、実際に手を動かすエンジニアに届く予算が削られてしまいます。また、日本特有の「メンバーシップ型雇用」の影響で、個人のスキルよりも勤続年数や職能等級が給与に反映されやすく、突出したスキルを持つ若手が正当に評価されにくい側面もあります。
2. 海外vs日本:エンジニアを取り巻く環境の決定的な違い
「海外のエンジニアは年収2,000万円が当たり前」というニュースを目にすることもありますが、これは一部のハイテク企業の事例に過ぎません。しかし、日本と海外(特に米国や西欧諸国)では、エンジニアに対する認識自体に大きな違いがあります。
「コスト」ではなく「投資」対象としてのエンジニア
多くの日本企業において、ITシステムは「コスト削減のためのツール」と見なされがちで、それに伴いシステム開発費も「コスト」として計上されます。コストは削減すべき対象であるため、エンジニアの人件費にも抑制圧力が働きます。
一方、米国のテック企業などでは、ITシステムこそが「利益を生み出す源泉(プロダクト)」です。優秀なエンジニアを獲得することは将来の利益への「投資」と見なされるため、高額な報酬を提示してでも人材を確保しようとする競争原理が働きます。このマインドセットの違いが、給与レンジの差となって表れています。
ジョブ型雇用と流動性
海外では職務内容を明確に定めた「ジョブ型雇用」が一般的です。「Javaを用いたバックエンド開発、実務経験5年以上」といった具体的な要件に対して給与が支払われます。スキルが市場価値と直結しているため、スキルアップが直接的な年収アップにつながりやすい環境です。
ただし、これにはリスクも伴います。成果が出せなければ解雇されるリスク(レイオフ)が日本よりも格段に高く、常に学び続けなければ淘汰される厳しい環境でもあります。「高給与=高リスク・高プレッシャー」であることは理解しておく必要があります。
3. 今後のキャリアを切り拓く3つの生存戦略
現状を踏まえ、日本のエンジニアが今後取るべきキャリア戦略は大きく分けて3つあります。自分の適性やライフスタイルに合わせて選択することが重要です。
戦略A:国内で「ビジネス×技術」のハイクラス人材になる
日本国内でも、外資系IT企業やメガベンチャー、スタートアップのCTO/VPoE候補などは、海外水準に近い給与が提示されています。ここで求められるのは、単なる技術力に加え、「技術を使ってどうビジネスを伸ばすか」という視点です。
要件定義の上流工程だけでなく、事業計画の策定や組織マネジメントに関わることで、代替不可能な人材としてのポジションを確立します。
戦略B:日本に住みながら「海外リモート案件(越境ワーク)」を獲得する
円安の恩恵を最大限に受ける方法です。UpworkやLinkedInなどのプラットフォームを活用し、海外企業のプロジェクトにフリーランスや契約社員として参画します。
時差の問題はありますが、ドルの強さを享受できるため、同じ作業量でも円換算での収入が1.5倍〜2倍になるケースも珍しくありません。英語でのコミュニケーション能力(特に読み書き)は必須ですが、ネイティブレベルの会話力までは求められない案件も多数存在します。
戦略C:特定技術の「超スペシャリスト」として差別化する
AI・機械学習、ブロックチェーン、セキュリティ、RustやGoなどの特定言語において、圧倒的な専門性を持つ道です。これらは世界共通の技術言語であるため、国境を越えて評価されやすい特徴があります。
GitHubでのOSS活動や技術記事の発信(英語推奨)を通じてポートフォリオを強化すれば、国内外問わずヘッドハントされる可能性が高まります。
4. 【実践編】市場価値を高めるためのキャリア診断チェックリスト
今の自分に何が足りないのか、これから何をすべきかを整理するためのチェックリストを作成しました。コピペして手帳やメモアプリに保存し、定期的に見直してください。
- 技術スタックの棚卸し
- 現在使っている技術は市場で「成長期」にあるか?(衰退技術にしがみついていないか)
- クラウド(AWS/GCP/Azure)の構築・運用経験はあるか?
- CI/CD環境の構築など、DevOpsの知見はあるか?
- アウトプットと発信
- GitHubに他人が読めるコード(ポートフォリオ)があるか?
- 技術ブログ(Qiita/Zenn/Medium)で知見を発信しているか?
- LinkedInのプロフィールは英語で記載されているか?
- ビジネス・コミュニケーション
- 技術用語を使わずに、非エンジニアにシステム仕様を説明できるか?
- 英語のドキュメントを翻訳ツールなしで大まかに読めるか?
- 自分の仕事が会社の売上のどこに貢献しているか説明できるか?
5. よくある質問(FAQ)
エンジニアの今後について、よく寄せられる疑問にお答えします。
Q1. 英語が全くできませんが、給与アップは狙えますか?
A. 可能ですが、選択肢は狭まります。
国内需要のみをターゲットにする場合、上流工程(PM/PL)へのキャリアアップか、極めて高度な技術スペシャリストになる必要があります。英語ができると、海外の最新技術ドキュメント(一次情報)にアクセスできる速度が上がるため、結果として国内での技術的優位性を保ちやすくなるというメリットもあります。まずはGoogle翻訳を使いながらでも、英語の公式ドキュメントを読む習慣をつけるところから始めましょう。
Q2. 30代・40代からでも市場価値を変えられますか?
A. 十分に可能です。
むしろ、経験豊富なエンジニアには「技術力」プラス「ドメイン知識(金融、医療、物流などの業務知識)」や「トラブルシューティング能力」が蓄積されています。これらは若手にはない強力な武器です。ただし、新しい技術へのキャッチアップをやめてしまうと一気に「扱いづらいベテラン」になってしまうため、柔軟性は常に意識する必要があります。
Q3. AIに仕事を奪われるのが心配です。
A. 「コードを書くだけ」の仕事は減りますが、エンジニアの仕事はなくなりません。
AIは強力なパートナーです。AIを活用してコーディング速度を上げ、その分空いた時間で設計やアーキテクチャの検討、UXの改善などに注力できるエンジニアの需要はむしろ高まります。「AIと競争する」のではなく「AIを使い倒す監督者」になる意識を持つことが、今後の生存戦略となります。
まとめ:環境のせいにする前に、動いた者勝ちの時代
日本のエンジニア給与の構造的な低さは事実ですが、それを嘆いているだけでは状況は変わりません。幸いなことに、ITスキルは他の職種に比べてポータブル(持ち運び可能)であり、個人の努力で市場価値を証明しやすい分野です。
海外市場に目を向ける、国内で希少性を高める、英語を学ぶなど、できることは山ほどあります。まずは、ご自身の職務経歴書(レジュメ)を更新し、市場での現在地を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。