LINE公式アカウントのトーク画面を開くと、下部に「予約する」「料金を見る」「お問い合わせ」などのボタンが表示されることがあります。このメニューを、問い合わせ対応やWebサイトへの案内に活用できるのが「リッチメニュー」です。

ただし、リッチメニューを設置することと、返信や予約処理を自動化することは、それぞれ別の設定です。「押すと何が起きるのか」「誰にどのメニューを見せるのか」を整理すると、必要な機能を選びやすくなります。

基本的なリンク案内や定型文の返信は、LINE公式アカウントの管理画面から設定できます。タブの切り替えや利用者ごとの出し分け、外部システムと連動する処理には、Messaging APIなどを使った仕組みを検討します。この記事では、その違いと導入手順を具体例で解説します。

目次

1.リッチメニュー・応答メッセージ・Messaging APIの違い

リッチメニューは、LINE公式アカウントのトーク画面下部に表示される操作メニューです。画像の中にタップできる領域を設定し、それぞれにリンクを開く、テキストを送信するといった動作を割り当てます。

応答メッセージは、受信したメッセージに対して事前に用意した内容を返信する機能です。一方、Messaging APIは、開発したシステムからメッセージ送信やリッチメニューの設定などを行うための仕組みです。

機能主な役割活用例
リッチメニュー利用者が目的の操作を選ぶ入口予約ページ、料金案内、お問い合わせへの誘導
応答メッセージ設定した内容を自動で返信する「営業時間」というメッセージに営業時間を返信
Messaging APIプログラムからLINEの機能を利用する利用者別のメニュー設定、外部データに基づく返信
Webhookメッセージ受信などの出来事をサーバーへ通知するボタン操作を受け取り、予約情報を照会する処理を開始

例えば「予約する」ボタンから予約フォームを開くだけなら、リッチメニューにリンクを設定する方法があります。予約の空き状況を取得してトークに返信したい場合は、外部の予約システムとの連携が必要です。

2.リッチメニューの「切り替え」は3種類に分けて考える

リッチメニューの切り替えは、何をきっかけに変えるかで設計が変わります。期間、利用者の操作、会員登録などの状態変化を分けて考えましょう。

切り替え方具体例主な実現方法
期間に合わせて変更する通常案内から期間限定キャンペーンへ変更管理画面で表示期間を設定
利用者がタブを選ぶ「サービス案内」と「サポート」を行き来するMessaging APIのリッチメニュー切替アクション
利用者の状態に合わせる会員登録後に会員向けメニューを表示外部システムとユーザー単位のリッチメニューを連携

表示期間を設定する切り替え

LINE Official Account Managerでは、リッチメニューの表示期間を設定できます。キャンペーンの開始前に次のメニューを準備するなど、日程が決まった運用に向いています。

ただし、APIでユーザー単位のメニューなどを設定している場合、そちらが優先されることがあります。「管理画面で切り替えたから全員に同じものが出る」と考えず、既存の設定も確認してください。

タブを押して切り替える

タブ切り替えでは、複数のリッチメニューを用意し、利用者の操作で表示を切り替えます。「サービス案内」「利用者向け」と分ければ、一つの画像にボタンを詰め込みすぎずに済みます。

Messaging APIでは、リッチメニューエイリアスという切り替え先の別名と、リッチメニュー切替アクションを使います。画像にタブらしい見た目を描くだけでは動作せず、タップ領域と切り替え先の設定が必要です。

利用者ごとに出し分ける

ユーザー単位のリッチメニューを使うと、利用者ごとに異なるメニューを表示できます。例えば、会員登録が完了した人には「予約確認」、未登録の人には「新規登録」を案内する設計です。

この場合は、LINEのユーザーと自社サービスの会員情報を適切に結び付ける処理が必要です。会員向けメニューが表示されていることだけを、本人確認や利用権限の判定に使わないようにしましょう。リンク先でもログイン状態と権限を確認します。

3.まずは管理画面で「ボタンを押すと返信する」を作る

自動化の最初の一歩として取り組みやすいのが、リッチメニューとキーワード応答の組み合わせです。例えば「営業時間」ボタンを押したときに、営業時間と休業日の案内を返す仕組みを作れます。

設定手順

  1. 返信内容を決める:営業時間、所在地、持ち物など、固定した内容で答えられる案内を選びます。
  2. 応答メッセージを作成する:「キーワード応答」を選び、「営業時間」などのキーワードと返信文を登録します。
  3. 利用中にする:保存だけで終わらず、応答メッセージの利用状態と「応答設定」を確認します。
  4. リッチメニューを作成する:テンプレートと画像を選び、該当する領域にテキスト送信のアクションを設定します。
  5. 送信する文字をそろえる:ボタンから送信するテキストを、登録したキーワードと同じ「営業時間」にします。
  6. スマートフォンで確認する:タップ後に文字が送信され、想定した案内が返信されるかを確認します。

キーワード応答は、設定したキーワードと完全一致するメッセージに反応します。「営業時間」と登録しても、「営業時間を教えてください」という文章まで同じ条件で認識する仕組みではありません。

ボタンから決まった文字を送れば、利用者に入力してもらう手間と表記の揺れを減らせます。自由入力の問い合わせにも対応する場合は、一致しないメッセージを受けたときの案内や、担当者への引き継ぎ方法も用意しましょう。

リンクを開く動作と、メッセージを送る動作を分ける

「料金ページを開く」ならリンク、「料金についてトークで返信する」ならテキスト送信とキーワード応答というように使い分けます。リンクを開いたことだけで、キーワード応答が自動的に実行されるわけではありません。

また、APIで設定するポストバックは、サーバーへ操作内容を知らせるためのアクションです。通常のテキストメッセージとはイベントの種類が異なるため、開発時はどちらを受け取る設計なのかを明確にします。

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4.Messaging APIでタブ切り替えを実装する仕組み

例えば「案内」と「サポート」の2つのタブを作る場合、それぞれの状態に対応するメニュー画像とタップ領域を用意します。「案内」側にはサポートへ移る操作を、「サポート」側には案内へ戻る操作を設定します。

開発時の大まかな手順は、次のとおりです。作成や設定にはMessaging APIを使い、利用者がタップした際の切り替えは、設定されたリッチメニュー切替アクションによって行われます。

  1. メニューA・Bの画像と、各ボタンの役割を決める。
  2. APIでメニューA・Bを作成し、それぞれの画像をアップロードする。
  3. 各メニューに対応するエイリアスを作成する。
  4. タブのタップ領域から、相手のエイリアスを指定する。
  5. 最初に表示するデフォルトメニューを設定する。
  6. 往復の切り替えと、他のボタンの動作を確認する。

切替アクションの種類は「richmenuswitch」、切り替え先の指定は「richMenuAliasId」です。画像上のタブ位置と、APIで設定したタップ領域がずれていないかも確認します。

切り替えた後の更新方法も決めておく

タブ切り替えによって表示されたメニューは、ユーザー単位のリッチメニューとして扱われます。そのため、後からデフォルトメニューだけを変更しても、切り替え済みの利用者には古いメニューが残ることがあります。

運用時は、どの利用者にどのメニューを割り当てているかを把握し、必要に応じて割り当ての変更やリンク解除を行います。更新時にメニューを一括削除する前に、利用中の切り替え先と影響範囲を確認しましょう。

5.予約や会員情報と連動させる自動化の設計

固定した案内だけでは対応できない場合は、外部システムとの連携を検討します。例えば、利用者が「予約確認」を押したら、登録済みの予約を調べ、その人に必要な情報だけを返信する仕組みです。

このような処理では、ボタン操作をWebhookで受け取り、サーバーで利用者と予約情報を照合してから、Messaging APIで結果を返します。リッチメニューは処理の入口であり、予約情報の取得や更新は連携先のシステムが担当します。

学習教室を例にしたメニュー設計

次の表は、学習教室のLINE公式アカウントを想定した設計例です。最初はリンク案内と定型返信から始め、運用上の必要が生まれた部分を個別に連携させます。

ボタン最初に作る動作必要に応じた拡張
体験授業申込フォームを開く空き枠の照会や申込状況の確認
料金案内料金ページを開く選択したコースに応じた案内
持ち物キーワード応答で定型文を返す予約した講座ごとの持ち物を案内
予約確認確認ページへのリンクを案内本人確認後に予約情報を取得
お問い合わせ相談方法と対応時間を案内問い合わせ種別に応じた担当者への振り分け

会員情報や予約内容を扱う場合は、Webhookの署名検証に加え、その利用者が対象の情報を閲覧・変更できるかを確認します。ボタンの連打や通知の再送によって、同じ予約を重複登録しない仕組みも必要です。

また、標準の応答メッセージとAPIからの返信を併用すると、一つの操作に複数の返信が届く構成になり得ます。どの問い合わせをどちらが担当するかを決め、時間帯ごとの応答設定も含めて確認してください。

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6.リッチメニューが切り替わらない・返信されないときの確認方法

うまく動かないときは、「メニューが表示されない」「タップ後の動作が違う」「返信が届かない」を分けて調べます。画像の問題と応答設定の問題を一度に変更すると、原因が分かりにくくなります。

症状最初に確認すること
パソコン版LINEでメニューが見えないリッチメニューはデスクトップ版では表示されないため、スマートフォン版で確認する
変更したメニューが出ない表示期間、APIのデフォルト設定、ユーザー単位の設定を確認する
一部の人だけ古いメニューが出るユーザー単位で古いメニューが割り当てられていないか確認する
タブを押しても切り替わらないタップ領域、エイリアス、切り替え先メニューと画像の設定を確認する
ボタンから文字は送られるが返信がないキーワードの完全一致、利用状態、応答設定、適用期間を確認する
同じ操作で複数の返信が来る標準の応答メッセージとAPI側の処理が重複していないか確認する

表示の優先順位は、基本的にユーザー単位のメニュー、APIのデフォルトメニュー、管理画面のデフォルトメニューの順です。また、設定方法によって反映のタイミングも異なるため、トーク画面への再入室も試してください。

7.使いやすいメニューにするための確認項目

機能を増やす前に、利用者が迷わず目的を達成できるかを確認しましょう。ボタンの数よりも、「押した後に期待した案内が出ること」が大切です。

  • ラベルを具体的にする:「こちら」より「予約する」「料金を見る」など、動作が分かる言葉を使う。
  • 文字の読みやすさを確認する:スマートフォンの実際の表示サイズで、文字と背景のコントラストを見る。
  • 見た目と操作範囲を合わせる:ボタンの境界付近を押しても、意図した動作になるか試す。
  • 戻る操作を用意する:タブを切り替えた後、元の案内へ戻れるようにする。
  • 自動化できない相談の出口を作る:担当者への相談方法と対応時間を案内する。
  • 成果まで確認する:クリック数に加え、申込完了や問い合わせ解決につながったかを確認する。

管理画面とMessaging APIでは、作成したリッチメニューを管理する場所が異なります。担当者が交代しても更新できるよう、作成方法、画像、リンク先、返信文、変更履歴をまとめておくと運用しやすくなります。

8.よくある質問

リッチメニューの自動応答にはプログラミングが必要ですか?

固定した文章を返すキーワード応答と、リッチメニューのテキスト送信を組み合わせる方法なら、管理画面から設定できます。予約状況などの外部データを使った返信には、追加の開発や対応サービスの利用を検討します。

タブ切り替えには有料の外部ツールが必須ですか?

必須ではありません。Messaging APIを使って自分で実装する方法があります。ただし、開発・保守の負担は発生するため、外部ツールを使う場合も、対応機能や料金、引き継ぎ方法を比較してください。

メニューを出し分ければ、会員情報を安全に表示できますか?

メニューの出し分けだけでは不十分です。会員情報を返すAPIやリンク先の画面で、本人確認とアクセス権限の確認を行います。LINEの表示名だけで会員を特定する設計も避けましょう。

自動応答には生成AIを使う必要がありますか?

必要ありません。営業時間や持ち物のように回答が決まっている案内は、キーワード応答で対応できます。自由な文章の質問を扱いたい場合は、回答範囲や誤回答時の対応を決めたうえで、AIの利用を検討します。

9.まずは一つのボタンから運用を始める

最初に作るなら、問い合わせが多い内容を一つ選び、リッチメニューから案内できるようにしてみましょう。「営業時間を返す」「申込フォームを開く」といった小さな機能でも、利用者と担当者の手間を減らすきっかけになります。

その後、情報が増えて探しにくくなったらタブ切り替えを、利用者ごとの情報が必要になったら外部連携を追加します。案内する内容、押した後の動作、困ったときの相談先をそろえながら、使われるリッチメニューに育てていきましょう。

参考資料

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