72の法則とは?投資と金利でお金が2倍になる期間を計算する方法【資産運用基礎】
「投資を始めたいけれど、どれくらいで資産が増えるのかイメージが湧かない」「銀行に預けていてもお金が増えないのはなぜ?」といった疑問をお持ちではありませんか?
資産運用を考える上で、最も基本的かつ強力なツールの一つが「72の法則」です。この法則を知っているだけで、複雑な計算機を使わずに「自分のお金がいつ2倍になるか」を瞬時に見積もることができるようになります。
本記事では、金融教育の観点から「お金」「投資」「金利」の関係性を紐解き、72の法則を使った具体的なシミュレーション、さらにはインフレリスクへの応用や投資詐欺を見抜くためのリテラシーまで、詳しく解説します。これから資産形成を真剣に考えたい方にとって、一生使える知識となるでしょう。
目次
1. 72の法則とは?魔法の計算式を理解する
72の法則とは、「元本が2倍になるために必要な年数」を簡易的に求めるための算式です。複利運用(利子が利子を生む運用)を前提としており、以下の非常にシンプルな式で表されます。
$$ 72 \div \text{金利(年利\%)} \approx \text{お金が2倍になる期間(年)} $$
例えば、年利が3%の投資商品にお金を預けたとします。この場合、元本が2倍になるまでにかかる年数は以下のように計算できます。
$$ 72 \div 3 = 24 $$
つまり、約24年で資産が倍になるということです。電卓を叩いて複雑な複利計算をしなくても、暗算で大まかな目安を知ることができるのがこの法則の最大のメリットです。
2. 金利の違いが運命の分かれ道:シミュレーション比較
「たかが1%、されど1%」と言われますが、金利の違いが資産形成のスピードにどれほど劇的な影響を与えるか、具体的に見ていきましょう。現在の日本の銀行預金金利と、一般的な投資信託の期待リターンなどを比較してみます。
ケースA:大手銀行の普通預金(金利 0.001%)
日本の大手銀行の普通預金金利は、長らく0.001%程度で推移してきました(※金利情勢により変動あり)。これを72の法則に当てはめるとどうなるでしょうか。
$$ 72 \div 0.001 = 72,000 $$
なんと、お金が2倍になるまでに7万2000年もかかります。これは人類の歴史規模の時間であり、実質的に「銀行に置いておくだけではお金は絶対に増えない」ことを意味しています。
ケースB:定期預金や国債(金利 0.3%〜0.5%)
少し条件の良い定期預金や個人向け国債などで、仮に年利0.4%だったとします。
$$ 72 \div 0.4 = 180 $$
これでも180年かかります。自分自身の寿命の範囲内で資産を倍にするのは不可能です。
ケースC:世界株式インデックス投資(期待リターン 5%〜7%)
株式投資(特に世界経済全体に分散投資するインデックスファンド)の過去の長期平均リターンは、一般的に年利4%〜7%程度と言われています。ここでは控えめに年利5%で計算してみましょう。
$$ 72 \div 5 = 14.4 $$
約14.4年で資産が倍になります。もし30歳で100万円を投資し、毎月積立を続けながら5%で運用できた場合、複利効果によって45歳、60歳といった節目で資産が大きく成長していることが期待できます。
3. 複利のメカニズム:なぜ雪だるま式に増えるのか
72の法則が成り立つ背景には「複利(Compound Interest)」の力があります。アインシュタインが「人類最大の発明」と呼んだとされる複利ですが、単利との違いを数式で確認しておきましょう。
単利と複利の計算式の違い
元本を \( P \)、年利を \( r \)(小数)、年数を \( n \) としたとき、\( n \) 年後の資産総額 \( A \) は以下のように表されます。
- 単利の場合: 利息は常に「最初の元本」に対してのみつきます。
$$ A = P(1 + r \times n) $$ - 複利の場合: 利息が元本に組み込まれ、その増えた元本に対してさらに利息がつきます。
$$ A = P(1 + r)^n $$
72の法則は、この複利の式 \( (1+r)^n = 2 \) を \( n \) について解く際、自然対数を使って近似したものです(数学的には \( \ln 2 \approx 0.693 \) なので本来は69.3の法則に近いですが、約数が多く計算しやすい72が採用されています)。
4. 逆転の発想:借金とインフレへの応用
72の法則は「資産を増やす」計算だけでなく、「資産が減る」「借金が増える」計算にもそのまま使えます。これはマネーリテラシーとして非常に重要な視点です。
借金の恐怖:リボ払いやカードローン
クレジットカードのリボ払いや消費者金融の金利は、実質年率15%〜18%程度に設定されていることがよくあります。年利18%で借金を放置した場合、借金総額が2倍になるのは何年後でしょうか?
$$ 72 \div 18 = 4 $$
たった4年で借金が倍になります。これが複利の「負の側面」です。投資で年利18%を出し続けるのはプロでも至難の業ですが、借金の世界では日常的にこの高金利が存在しています。
インフレでお金の価値が半分になる期間
インフレ(物価上昇)は、現金の価値を目減りさせます。例えば、毎年2%ずつ物価が上昇するインフレの世界では、手元の100万円の価値は相対的に下がっていきます。「現在の価値の半分(実質購買力が半分)」になるまでの期間も72の法則で計算できます。
$$ 72 \div 2\% \text{(インフレ率)} = 36 $$
インフレ率2%が続くと、36年後には預金の価値が実質半分になってしまいます。タンス預金やゼロ金利の銀行預金では、額面は減らなくても「買えるものの量」が減っていくリスクがあることを認識しましょう。
5. 応用編:115の法則と126の法則
72の法則以外にも、目標倍率に応じた便利な法則があります。余裕があれば覚えておくと、ライフプランニングの精度が上がります。
- 115の法則(3倍になる期間):
$$ 115 \div \text{金利} \approx \text{3倍になる期間} $$
例:年利5%なら \( 115 \div 5 = 23 \) 年で資産が3倍。 - 126の法則(投資積立で2倍になる期間):
※これは「一括投資」ではなく「毎月積立」をした場合に、元本+運用益が積立総額の2倍になる目安と言われることがありますが、計算前提が複雑なため参考程度に留めるのが無難です。
6. 投資詐欺を見抜く「相場観」を養う
72の法則は、怪しい投資話を見抜く防具にもなります。SNSなどで「月利5%保証!」「1年で資産が倍になる!」といった広告を見かけたことはありませんか?
もし「1年で資産が倍(年利100%)」という話が本当なら、72の法則を適用するまでもなく異常ですが、例えば「月利3%」という勧誘があったとします。
月利3%は単利換算で年利36%、複利ならもっと高くなります。仮に年利40%とした場合:
$$ 72 \div 40 = 1.8 $$
2年足らずで資産が倍になり、10年続けば天文学的な数字になります。世界最高の投資家ウォーレン・バフェットでさえ、長年の平均利回りは20%前後と言われています。それを遥かに超える利回りを「あなただけに」「元本保証で」提案してくる話は、99.9%詐欺(ポンジ・スキーム)であると判断できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 72の法則はどんな金利でも正確ですか?
A1. あくまで近似式(概算)です。金利が6%〜10%程度の範囲ではかなり正確ですが、金利が高すぎる場合などは誤差が大きくなります。目安として活用してください。
Q2. NISAやiDeCoでもこの法則は使えますか?
A2. はい、使えます。NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)はあくまで「税金がお得になる口座(箱)」の名前であり、中身の運用利回りの計算には72の法則がそのまま適用できます。非課税であれば、リターンがそのまま手取りになるため、より法則通りの資産形成がしやすくなります。
Q3. 金利の計算で税金は考慮されていますか?
A3. 72の法則の計算結果は「税引前」の数字になることが一般的です。実際の投資では利益に対して約20%の税金がかかるため(NISA除く)、実質的に手元に残るお金が2倍になるには、計算よりも少し長い期間が必要です。
まとめ:72の法則を羅針盤に、賢い資産形成を
72の法則は、投資における地図とコンパスのような存在です。
- 資産を増やす目安:目標額に到達するまでの期間を逆算する。
- リスク管理の目安:借金の返済スピードやインフレの影響を把握する。
- 詐欺回避の目安:非現実的な高利回りに騙されない相場観を持つ。
投資にはリスクが伴いますが、「時間」を味方につけることでリスクを抑えつつ、複利効果を最大化することが可能です。まずは「自分が何年で資産を倍にしたいか」を考え、そこから逆算して「必要な利回り(リスク許容度)」を決めることから始めてみてはいかがでしょうか。
焦ってハイリスクな投機に走るのではなく、72の法則を胸に、じっくりと時間をかけた堅実な資産形成を目指しましょう。