東大数学に取り組んで、「解説を読むと理解できるのに、自分では方針が浮かばない」と感じたことはありませんか。こうしたときは、正解したかどうかに加えて、条件の整理・解法の選択・計算・答案作成のどこで止まったのかを確認すると、復習する内容を決めやすくなります。

東大数学の学習では、基本事項を使えるようにしたうえで、条件から結論までの道筋を自分で説明する練習が大切です。この記事では、円周率の証明を具体例に、問題への取り組み方と、次の演習につながる復習の手順を解説します。

目次

1.東大数学で求められる力とは?

東京大学は、入学前に身につけてほしい数学の力として、数学的に考える力、自分の考えを表現する力、複数の知識や技術を組み合わせる総合力を挙げています。その前提として、高校で学ぶ基本的な知識と技法の習得も求めています。

公式の理解、典型問題の演習、正確な計算は、考えるための土台です。解き方を覚えた後に「どの条件があるから使えるのか」「なぜこの式に変形するのか」まで確認すると、設定が変わった問題にも取り組みやすくなります。

問題を解く力を4つに分けて確認する

確認する力 演習で確認すること
条件を整理する力 与えられた条件、変数の範囲、求めるものを図や式で表せるか
方針を立てる力 使う定理や公式を選び、その理由を説明できるか
計算を進める力 式変形や場合分けを、条件を保ったまま進められるか
答案にまとめる力 途中の結果から結論が導かれる理由を、読み手に伝えられるか

例えば、方針は正しかったのに計算を間違えた場合と、使う定理を選べなかった場合では、必要な復習が異なります。「数学が苦手」という大きなくくりで終わらせず、止まった工程を具体的に見つけましょう。

東大数学の「面白さ」をどう捉えるか

数学の面白さを感じる場面の一つは、知っている基本事項が、初めて見る問いの解決につながる瞬間です。円周率のような身近な数も、その大きさを証明しようとすると、図形の性質と不等式が結びつきます。

ただし、面白いと感じるかどうかは人それぞれです。難しい問題をすぐに楽しめなくても、条件を一つ式にできた、説明できなかった一行の理由が分かった、といった変化を学習の進歩として捉えられます。

2.具体例:「円周率が3.05より大きい」を証明する

2003年の東京大学の入試では、円周率が3.05より大きいことを証明する問題が出題されました。ここでは、半径1の円に内接する正12角形を使って、証明の道筋を確認します。

円周率の小数を覚えているだけでは、その値が正しい理由を説明できません。そこで、長さを計算できる図形と円周を比較し、円周率の下限を求めます。

ステップ1:円周と正12角形の周を比較する

半径1の円の円周は、2πです。この円に内接する正12角形を描き、その周の長さをLとします。

正12角形の各辺は、円周上の隣り合う頂点を結ぶ弦です。各弦は対応する短い弧より短いため、それらを足し合わせると、次の関係になります。

$$2\pi > L$$

両辺を2で割ると、円周率についての不等式が得られます。

$$\pi > \frac{L}{2}$$

したがって、L÷2が3.05より大きいことを示せば証明できます。周の長さLそのものを使うなら、比較する目標は6.10です。円周と円周率を混同しないことが、この証明の重要な確認点になります。

ステップ2:正12角形の一辺の長さを求める

円の中心をO、正12角形の隣り合う頂点をA、Bとします。OAとOBの長さはともに1で、中心角AOBは360度を12等分した30度です。

一辺ABの長さをaとすると、三角形OABに余弦定理を使えます。

$$a^2=1^2+1^2-2\cdot1\cdot1\cdot\cos30^\circ$$

$$a^2=2-\sqrt{3}$$

長さaは正なので、次のように表せます。

$$a=\sqrt{2-\sqrt{3}}$$

正12角形の周の長さは一辺の12倍です。その半分を求めると、証明したい不等式につながります。

$$L=12\sqrt{2-\sqrt{3}}$$

$$\frac{L}{2}=6\sqrt{2-\sqrt{3}}$$

ステップ3:3.05を超えることを確かめる

残るのは、6倍した平方根の値と3.05との比較です。平方根を小数で細かく計算する代わりに、2乗した値を比べます。

まず、1.74の2乗は3より大きいため、√3は1.74より小さいと分かります。

$$1.74^2=3.0276>3$$

$$\sqrt{3}\lt1.74$$

この不等式から、次の下限が得られます。

$$\left(6\sqrt{2-\sqrt{3}}\right)^2=36(2-\sqrt{3})$$

$$36(2-\sqrt{3})>36(2-1.74)=9.36$$

一方、3.05の2乗は次の値です。

$$3.05^2=9.3025\lt9.36$$

比較している2つの数はどちらも正なので、2乗した値の大小から、元の数の大小が分かります。

$$6\sqrt{2-\sqrt{3}}>3.05$$

これを最初の円周との比較につなげると、証明が完成します。

$$\pi>\frac{L}{2}=6\sqrt{2-\sqrt{3}}>3.05$$

この問題から学べること

この証明では、円周率そのものを正確に計算する必要はありませんでした。目標の値を超えると分かる下限を作り、その下限を図形と計算で裏づけています。

復習では「正12角形を使う」と覚えるだけでなく、円周より短い長さを利用する理由、周の長さを2で割る理由、平方根の比較で2乗を使える条件を説明してみてください。解法を支える判断まで振り返ることが、別の問題への応用につながります。

3.東大数学の演習を進める5つの手順

手順1:基本事項を、使う条件と一緒に確認する

定理や公式は、式だけでなく適用条件も確認します。例えば、両辺を2乗して大小を比較するなら符号を確認し、式をある文字で割るなら、その文字が0になる場合を検討します。

教科書の説明や基本例題を読み、途中の式変形を自分で再現してみましょう。理由が説明できない箇所が見つかったら、難しい問題を増やす前に、その基本事項へ戻ります。

手順2:問題文を「条件」と「目標」に分ける

解き始める前に、与えられた条件と、最後に示すべきことを分けて書きます。図形なら補助線や座標、整数なら小さな値での確認など、条件に合った表現を選びます。

円周率の例では、目標はπが3.05を超えることでした。その目標を「半径1の円周が6.10より長いこと」へ言い換えると、図形の長さを使う方針が見えてきます。

手順3:試した方針と、止まった理由を残す

解けないときは、試した方法を短く記録します。「余弦定理で辺の長さは求められたが、平方根と小数の比較で止まった」という記録なら、解説のどこを重点的に読むかが明確になります。

考える時間を無制限に延ばす必要はありません。学習に使える時間の中で区切りを決め、進展がなければヒントや解説を確認し、足りなかった知識や判断を整理しましょう。

手順4:結論までつながる答案を書く

答案には、文字の定義、使う条件、必要な式変形、結論を記します。計算の途中で分かったことが、問題の目標をどう満たすのかまで書くことが大切です。

例えば、正12角形の一辺を求めただけでは、円周率の証明は終わっていません。周の長さ、円周との大小関係、3.05との比較を順につなぐことで、読み手が確認できる答案になります。

手順5:解説を閉じて解き直す

解説を読んだ後は、何も見ずに方針と主要な計算を再現してみます。その場では解けても、時間を空けると止まることがあるため、別の日にも確認すると復習すべき箇所を見つけやすくなります。

同じ問題の再現に加え、似た問題で使う条件を判断できるかも確認しましょう。毎回すべてを書き写すより、間違えた判断や計算を短く残すと、復習の目的が明確になります。

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4.過去問は「分野別の練習」と「時間を測る演習」を組み合わせる

過去問を使い始める時期は、履修状況と基本事項の理解度によって変わります。早い段階で問題の形式を確認し、学習が進んだ分野から取り組む方法もあります。

未習事項が多い状態で年度単位の得点だけを比べても、学力を判断しにくい場合があります。まずは解ける範囲で課題を見つけ、準備が進んだら本番を想定した演習へ移りましょう。

演習の方法 主な目的 振り返ること
分野別に取り組む 学習済みの知識を入試問題で使う 基本事項の不足、条件の読み落とし、方針の選び方
1問の答案を仕上げる 結論まで説明をつなぐ 論理の飛躍、場合分けの漏れ、計算の正確さ
年度単位で時間を測る 取り組む順番と時間配分を確かめる 時間を使いすぎた問題、見直し時間、後回しにする判断

何年分解くかは、残り期間と復習に必要な時間を合わせて決めます。年数を増やすだけでなく、以前解けなかった問題を再び解けるか、新しい問題でも同じ判断を使えるかを確認してください。

試験範囲や時間などの条件は、受験する年度の募集要項で確認します。古い過去問を使う場合は、現在の出題範囲との違いにも注意しましょう。

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5.東大数学の勉強でよくある疑問

公式の証明は、すべて暗記する必要がありますか?

まずは、教科書で扱う主要な定理や公式について、意味と使える条件を確認しましょう。導出をたどることで理解が深まるものは、自分でも再現してみます。

証明を覚えることだけに時間を使わず、基本問題で正しく使えるかも確かめてください。公式の理解と演習を行き来することが大切です。

計算が長くなるときは、方針が間違っているのでしょうか?

計算が長いことだけで、方針が誤りだとは判断できません。正しい解法でも、まとまった計算が必要な場合があります。

ただし、展開する前に因数分解や対称性を使えないか、変数を減らせないかを確認する余地はあります。別解を読むときも、短さだけでなく、自分が条件を確認しながら再現できるかを比べましょう。

途中までしか解けない場合、何を書けばよいですか?

条件から正しく導けた結果と、その理由を整理して書きます。根拠がないまま結論へ飛んだり、試行錯誤の計算を順序なく並べたりすると、どこまで分かっているのかが伝わりにくくなります。

部分点の配分は、確認できる採点基準がない限り断定できません。「この一行を書けば何点」と考えるより、正しい範囲を明確に説明する練習を重ねましょう。

解説を読んでも理解できないときはどうすればよいですか?

分からない箇所を「この定理を使える理由」「この式変形」「この場合分け」のように切り分けます。必要な基本事項を教科書で確認し、それでもつながらなければ先生などに質問しましょう。

質問するときは、自分で理解できたところと、止まった一行を示すと説明を受けやすくなります。説明を聞いた後は、自分の言葉で理由を書き直して確認してください。

6.次の1問で確認したいこと

次に数学の問題を解くときは、答え合わせに加えて、以下の項目を確認してみてください。できなかった項目を一つ選ぶと、次の復習で取り組むことが具体的になります。

  • 問題の条件と、最後に示すべきことを分けて書けたか
  • 使った公式や定理について、適用条件を確認したか
  • 不等式の向き、符号、変数の範囲を保って計算できたか
  • 途中の結果から結論が導かれる理由を説明できたか
  • 解説を閉じても、方針と主要な計算を再現できたか

円周率の証明でも、円周と正多角形の周を比較し、その結果を目標の不等式につなぐことで答えにたどり着きました。こうした一つひとつの判断を確認することが、解説を理解する段階から、自分で答案を組み立てる段階へ進む練習になります。

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