環境の変化を成長につなげるには?学習を続けるための5つのステップ
進学や就職、異動、引っ越しなどで環境が変わると、これまで続けていた勉強が進まなくなることがあります。一方、新しい人や仕事に出会い、「これを学んでみたい」と感じる場面もあるのではないでしょうか。
環境の変化を成長につなげるには、変わった条件を整理し、学ぶ内容と取り組み方を調整して、実際にできるようになったことを確かめることが大切です。この記事では、学生の勉強から社会人の学び直しまで使える、5つのステップを紹介します。
目次
1.環境が変わったときは、学習の条件を見直す
環境が変わると、学習に使える時間、必要な知識、相談できる相手なども変わります。以前の方法が続かなくなったときは、自分の能力や意欲を判断する前に、取り組む条件を確認してみましょう。
例えば、通勤時間が延びた人が、以前と同じ時間帯に同じ量の勉強を続けるのは難しいかもしれません。学校の授業が難しくなった場合も、勉強時間を増やすだけでなく、前提となる知識を学び直す必要があることもあります。
| 変化した条件 | 起こり得る困りごと | 見直すこと |
|---|---|---|
| 時間 | これまでの学習時間を確保できない | 取り組む時間帯と、1回の学習量 |
| 場所・道具 | 集中しにくい、教材を使いにくい | 作業場所、通知、教材へのアクセス |
| 求められる内容 | 以前の知識だけでは対応できない | 必要な基礎知識と練習する課題 |
| 人との関わり | 分からないことを相談できない | 質問できる相手と確認の機会 |
新しい環境に入ること自体が、成長を保証するわけではありません。学ぶ機会があっても、取り組む時間や支援が足りなければ、活用しにくいことがあります。
反対に、転職や進学のような大きな変化がなくても、課題の選び方や相談の仕方を変えることはできます。まずは、現在の環境で調整できる部分を探してみましょう。
2.ステップ1:変わったことと、使えるものを書き出す
最初に、「以前と何が違うのか」を具体的にします。「忙しくなった」「勉強が難しくなった」だけで終わらせず、どの時間が減り、どの内容で止まっているのかを確認してください。
同時に、新しく使えるようになったものも探します。学校の質問時間、職場の研修資料、詳しい同僚、近くの図書館など、環境の変化によって学習の選択肢が増えている場合もあります。
- 減ったもの:平日の自由時間、静かな場所、以前の相談相手など。
- 増えたもの:新しい教材、実践する機会、相談できる人など。
- 変わらず使えるもの:基礎知識、これまでのノート、使い慣れた道具など。
- 調整したいもの:予定の入れ方、学習量、質問するタイミングなど。
ここで、すべてを自分一人の努力で解決しようとする必要はありません。業務量や授業の進め方など、自分だけでは変えられない条件については、担当者への相談や利用できる支援も検討します。
3.ステップ2:「成長した状態」を一つ決める
「成長したい」「もっと勉強したい」という気持ちは、学習を始めるきっかけになります。ただ、そのままでは何を練習し、どこまでできればよいかが曖昧です。
まずは、近いうちにできるようになりたい行動を一つ選びましょう。この記事では、成長を「以前は難しかったことを、自分で説明したり、実行したりできる範囲が広がること」として考えます。
| 広い目標 | 確認できる目標の例 |
|---|---|
| 数学が得意になりたい | 二次関数の基本問題で、方針を説明してから解ける |
| 新しい仕事に慣れたい | 通常の処理を行い、例外が出たときの相談先を判断できる |
| プログラミングを学びたい | 条件分岐を使った処理を書き、入力を変えて動作確認できる |
| 説明が上手になりたい | 結論・理由・具体例を整理し、相手の疑問に答えられる |
目標を決めたら、現在どこまでできるかを一度試します。すでにできる部分と、説明や練習が必要な部分を分けると、学ぶ範囲を絞りやすくなります。
初めての内容で自力では進められない場合は、見本を確認する段階から始めて構いません。現在の理解を飛ばして難しい課題へ進むより、必要な基礎を確かめながら取り組みましょう。
4.ステップ3:学習を始めやすい環境をつくる
学ぶ内容が決まったら、「いつ、どこで、何をするか」を決めます。空き時間ができるのを待つだけでは取り組めない場合は、今の生活の中で実行しやすい場面を選んでください。
例えば、「夕食の片付けが終わったら、机で前回間違えた問題を1問解く」と具体化します。時間帯や問題数は例であり、自分の予定と課題の難しさに合わせて調整しましょう。
最初の作業までに必要な準備を減らす
勉強を始めるたびに教材やページを探しているなら、前回の終了時に次の課題を決めておきます。学習中に不要な通知が気になる場合は、通知設定や端末の置き場所を調整する方法もあります。
ただし、環境づくりだけに時間を使いすぎないことも大切です。新しい机やアプリをそろえる前に、現在の道具で一つの課題に取り組めるかを試してみてください。
予定どおりに進まない日の対応も決める
新しい環境では、予定が変わる日もあります。その日に予定した分量が難しければ、復習する範囲を減らす、別の時間に移す、休んで次の実施日を決めるなど、状況に合わせて対応します。
一度できなかったことで、計画全体を失敗と考える必要はありません。何が原因だったかを確認し、次に実行できる形へ組み直しましょう。
仕事や生活の予定が変わり、勉強が続かないときは、時間・環境・復習の組み合わせを見直してみましょう。社会人が学習を再開する手順を紹介しています。
社会人が勉強を続ける方法|「学習体力」を支える時間・環境・復習の整え方 記事を読む →5.ステップ4:学んだことを使い、結果を確かめる
説明を読んで理解したつもりでも、自分で取り組むと止まることがあります。学習の中に、教材を閉じて説明する、見本を隠して解く、実際に操作するなど、できることを確認する機会を入れましょう。
RoedigerとKarpickeの文章学習の実験では、学習の2日後や1週間後のテストで、再読を行った条件より、内容を思い出すテストを行った条件の方がよい成績を示しました。この研究は、学習中に思い出す練習を取り入れる際の参考になります。
実践では、答えた後に教材や見本と照合し、違っていた部分を修正します。答えが分からないまま繰り返すのではなく、必要な説明を確認してから再度試してください。
相談するときは、試したことと困っている点を伝える
新しい環境では、自分だけでは気づきにくい作業の基準や前提があることもあります。質問できる相手がいる場合は、「どこまで分かったか」「何を試したか」「どこで止まったか」をまとめて相談しましょう。
例えば、「全部分かりません」だけでなく、「この手順まではできましたが、次にどの条件で判断するかが分かりません」と伝えます。回答を受けた後は、自分でやり直して理解を確かめるところまで行います。
時間を空けて、もう一度確認する
Cepedaらの研究では、事実に関する知識を復習する際、効果的な学習間隔は、後のテストまでの期間によって変わりました。すべての内容に同じ復習日程を当てはめればよい、という結果ではありません。
まずは授業や仕事で使う時期に合わせて確認日を置き、答えられたかを見て調整します。確認する際は、前回と同じ問題に加え、条件や問われ方を変えた課題にも対応できるかを試してみましょう。
教材を読んだ回数だけでなく、自力で解けるか、時間を空けても使えるかを確認することが大切です。問題集の解き直しと、次の教材へ進む目安を整理しています。
参考書・問題集を1冊やり込む方法|解き直しの手順と次の教材へ進む目安 記事を読む →6.ステップ5:結果に合わせて、次の行動を変える
振り返りでは、学習した時間と、できるようになったことを分けて記録します。「30分勉強した」は取り組んだ量の記録ですが、何を身につけたかは別に確かめる必要があります。
記録は細かく作り込みすぎず、「取り組んだこと・確認できたこと・次にすること」を残せば、次回の学習に使えます。以下は記入方法を示す架空の例です。
| 取り組んだこと | 確認できたこと | 次にすること |
|---|---|---|
| 数学の基本問題を解いた | 計算できたが、式を選ぶ理由を説明できなかった | 問題の条件と式の関係を確認する |
| 新しい業務の手順を試した | 通常の処理はできたが、例外への対応が不明だった | 例外の扱いを担当者に質問する |
| プログラムを書いた | 通常の入力では動くが、空欄を渡すと失敗した | 空欄の場合の処理を追加して確認する |
振り返った結果、今の方法が合っていれば、続けることも選択肢です。毎回新しい勉強法へ変える必要はなく、うまくいっていない部分を具体的に調整しましょう。
例えば、取り組めない原因が教材の難しさなら、時間を増やす前に説明や例題を見直します。学習内容を理解できていても、実行する時間がないなら、予定や分量の調整が必要です。
7.環境を変えるか迷ったときの考え方
今の環境で改善できることを試しても、必要な学習機会や支援が得られない場合は、環境そのものを見直す選択肢もあります。ただし、変更する前に「何を解決したいか」を明確にしましょう。
例えば、教材を変えるなら説明の詳しさ、学ぶ場所を変えるなら集中しやすさや移動時間を確認します。進学や転職など大きな変更では、費用、生活への影響、利用できる支援も含めて比較する必要があります。
- 現在、どの条件が学習や実践を妨げているか。
- 今の環境で調整できることはあるか。
- 変更先では、必要な機会や支援を得られるか。
- 体験や見学など、小さく確かめる方法はあるか。
- 変更に伴う時間や費用を確保できるか。
新しい環境で苦労していることだけを、成長の証拠と考える必要はありません。負担が大きいときは、課題を減らす、支援を求める、環境を変えることも検討してください。
8.よくある質問
環境を変えないと、成長できませんか?
大きく環境を変えなくても、学ぶ課題、使う教材、相談する相手、結果の確認方法を変えることはできます。まずは身につけたいことを決め、現在の環境で取り組める方法を探しましょう。
新しい環境では、何から学べばよいですか?
近いうちに必要になる知識と、他の内容を理解する前提になる基礎から確認します。学校なら授業の目標、職場なら期待される役割を確認し、優先順位が分からない場合は担当者に相談してください。
成長している実感がありません。何を見ればよいですか?
以前は説明を見なければできなかったことを、自力でできるか確かめてみましょう。正確さ、説明できる範囲、条件が変わったときの対応など、具体的な行動で比較すると変化を捉えやすくなります。
一度勉強を休むと、続かなくなりそうで不安です。
休んだ回数だけで、学習の成果は決まりません。再開するときに取り組む課題を一つ決めておき、現在の理解を確認してから予定を組み直しましょう。
9.まずは、今の環境で一つ試してみる
環境の変化を成長につなげるには、変わった条件を把握し、身につけたいことを選び、実践と確認を重ねることが大切です。以前のやり方をそのまま続けるのが難しければ、現在の生活に合わせて調整できます。
まずは「今、できるようになりたいこと」を一つ書き、そのために次に行う学習を決めてみてください。取り組んだ後は、できたことと残った課題を確認し、次の行動へつなげていきましょう。
参考資料
- Roediger & Karpicke(2006):Test-enhanced learning: taking memory tests improves long-term retention
- Cepeda ほか(2008):Spacing effects in learning: A temporal ridgeline of optimal retention
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