教科書を読んだときは分かったつもりでも、問題を解こうとすると手が止まる。学んだ内容を説明しようとして、言葉が出てこない。このようなときは、読む時間に加えて、覚えていることを確かめる時間を設けてみましょう。

この記事では、「整理・説明・思い出す」を組み合わせた勉強の進め方を紹介します。説明した後の答え合わせや、時間を空けて解き直すところまでを、一つの学習の流れとして考えます。

目次

1.「教えると90%覚えられる」とは言えない

学習方法の紹介では、「講義は5%、読書は10%、他人に教えると90%」といった数値を並べたラーニングピラミッドを見かけます。しかし、これらを、誰にでも当てはまる記憶定着率として扱うことはできません。

LalleyとMillerの論文では、このピラミッドの数値や順位を裏付ける信頼できる研究は確認されなかったと報告されています。「教えると理解度が90%になる」という説明も、この図から導けるものではありません。

一方、教える準備については、個別の実験があります。Nestojkoらの研究では、後で人に教えるつもりで文章を学んだ参加者が、テストを受けるつもりで学んだ参加者より、内容を整理して思い出すなどの点で良い成績を示しました。

ただし、この実験では実際に教える活動は行っていません。「教えるつもりで学ぶこと」と「実際に教えること」を区別し、あらゆる学習で同じ効果が得られると広げすぎないことが大切です。

2.最初に「何ができればよいか」を決める

勉強を始める前に、その範囲を学んだ後で何ができるようになりたいかを決めます。「この章を読む」という予定に加えて、「2つの用語の違いを説明する」「例題と同じ種類の問題を解く」といった目標を置いてみましょう。

説明する相手を想定する場合は、同じ授業を受けている友人や、学び始めた頃の自分などで構いません。相手が知っていることを考えると、説明に必要な前提を整理できます。

学ぶ内容学習後に確かめることの例
数学の公式使える条件を説明し、問題で使えるか
英語の文法例文の意味を説明し、自分でも文を作れるか
歴史の出来事前後の出来事との関係を説明できるか
プログラミング処理の流れを説明し、条件を変えて動かせるか

目標は、最初から大きくする必要はありません。説明も問題演習も進まない場合は、扱う範囲を一つの用語や例題まで小さくして、必要な知識から確認してください。

3.情報を整理し、説明の骨組みを作る

教材を読むときは、重要な用語、意味、具体例、使う条件などを整理します。文章を短くするだけでなく、「何と何を比べているのか」「この結論にはどんな前提があるのか」を確かめましょう。

例えば、平均値と中央値を学ぶなら、それぞれの求め方に加えて、極端な値が入ったときの違いもメモします。定義と例を結び付けておくと、言葉だけを覚えていないか確認できます。

整理する項目平均値と中央値を学ぶ場合の例
意味合計を個数で割る値と、並べた中央の値
共通点データの中心を捉える代表値
違い極端な値による影響の受け方
確認する例「1、2、3」と「1、2、30」を比較する

定義や公式は、正確に書き写して構いません。そのうえで、自分で考えた例や疑問を添えてください。教材からの引用と自分の説明を分けておくと、後で内容を確かめやすくなります。

4.資料を閉じて、思い出しながら説明する

ひと通り確認したら、資料を閉じて、学んだ内容を思い出してみます。記憶から情報を取り出す練習は「検索練習」や「想起練習」と呼ばれます。ここでいう検索は、インターネットで調べることではありません。

RoedigerとKarpickeの文章学習の実験では、学習の5分後には再読した条件が有利でしたが、2日後や1週間後には、思い出すテストを行った条件の方が良い成績を示しました。直後の手応えと、時間がたった後の記憶を分けて考える必要があります。

実践するときは、先ほど決めた問いに、口頭または文章で答えてみましょう。何も見ずに答えることが難しければ、見出しやキーワードを手掛かりにしても構いません。その場合は、何を見て答えたかも記録します。

専門用語を無理に避ける必要はありません。用語を使ったうえで、その意味や具体例を説明してください。例えば「中央値とは何か」を説明した後、実際のデータから求められるかを試します。

また、言葉に詰まっただけで、理解していないと決めつける必要もありません。思い出せないのか、意味が曖昧なのか、説明の順序がまとまらないのかを、資料や問題と照らし合わせて確認しましょう。

5.答え合わせで、説明の誤りを修正する

説明が終わったら、教科書や解説を開いて内容を確認します。すらすら話せた部分にも誤りが含まれる可能性があるため、詰まった箇所だけでなく、説明全体の要点を照合してください。

先ほどの代表値の例なら、「1、2、3」は平均値も中央値も2です。「1、2、30」に変えると、平均値は11になりますが、中央値は2のままです。こうした具体例を使うと、説明と計算が一致しているかを確かめられます。

答え合わせで見つかったこと次に行うこと
用語が出てこなかった意味と具体例を確認して、もう一度答える
定義を間違えていた教材の定義と、自分の説明の違いを確認する
使える条件を抜かしていた条件を追記し、当てはまらない例も考える
説明できたが問題を解けなかった例題の手順を確認して、類題に取り組む

修正した後は、答えを眺めて終わらず、もう一度資料を閉じて答えてみましょう。思い出せないまま長く粘る必要はありません。必要な説明やヒントを確認してから、改めて取り組んでください。

6.時間を空けて、もう一度確かめる

学習直後に答えられても、後日も同じように答えられるとは限りません。別の日にも短い確認の機会を設け、覚えていることと、学び直す必要があることを分けましょう。

復習の間隔について、すべての教材に共通する最適な日程が決まっているわけではありません。Cepedaらの研究でも、効果的な学習間隔は、どのくらい先まで覚えておきたいかによって変わることが示されています。

例えば、翌日の勉強を始めるときに前回の問いへ答え、その後も数日空けて確認する予定を立ててみます。これは運用の一例です。答えられなかった内容は早めに見直し、試験日や学習量に合わせて調整してください。

復習では、同じ説明を繰り返すだけでなく、数字や条件を変えた問題も取り入れましょう。用語を覚えているかと、その知識を使って判断できるかを、それぞれ確かめます。

7.短い記録を残し、次の勉強につなげる

毎回、長い説明文や発表資料を作る必要はありません。「何を確かめたか」「どこを間違えたか」「次に何をするか」が分かる短い記録を残してみましょう。

例えば、次のような形なら、復習するときに確認すべき点を見つけられます。空欄をすべて丁寧に埋めることより、次の行動が分かることを重視してください。

記録項目記入例
今日の問い平均値と中央値はどう違うか
資料を見ずに答えられたことそれぞれの求め方
修正したこと極端な値が入ったときの説明
次に行うこと別のデータで計算し、結果を比較する

「整理・説明・思い出す」を取り入れるときは、説明の上手さだけを目標にせず、正確さと問題への対応も確認しましょう。まずは今日学んだ内容から問いを一つ選び、答えた後に教材と照合するところから始めてみてください。

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