偶然知った情報が、仕事や学びのきっかけになることがあります。後から振り返ると「運がよかった」と感じる出来事にも、情報を知った経緯や、そこから自分が選んだ行動があります。

ただし、人生で起こることのすべてを、本人の考え方や行動だけで説明することはできません。この記事では、「運」に関する研究や考え方を整理しながら、機会を見つけ、確かめ、試すための習慣を紹介します。

目次

1.「運がよいと感じること」と、偶然の結果を区別する

「運がいい」という言葉は、抽選に当たった場合にも、準備していた知識を仕事で使えた場合にも使われます。しかし、この二つでは結果に関わる仕組みが異なります。

抽選の結果を前向きな気持ちだけで変えることはできません。一方、仕事で必要な知識を学び、成果を整理しておくことは、機会が来たときに対応するための準備になります。

心理学者リチャード・ワイズマンは、自分を幸運・不運だと捉える人々について調べ、機会への気付き、直感、将来への期待、不運への対処という四つの観点を紹介しています。本人の研究紹介では、取り組みの後に「運がよくなったと感じる」といった参加者の報告も説明されています。

ただし、こうした報告と、あらゆる偶然の結果を変えられるという主張は別です。この記事では、これらの観点を自分の行動を振り返る手掛かりとして扱います。

2.普段とは異なる情報に触れる機会を作る

新しい情報を得たいときは、普段どこから情報を集めているかを確認してみましょう。同じ人、同じ媒体、同じ分野だけを見ている場合は、別の視点に触れる機会を一つ加える方法があります。

例えば、関心のあるテーマを別の専門分野から調べる、勉強会で他の参加者の質問を聞く、以前一緒に活動した人の近況を知る、といった行動です。単に変化を増やすのではなく、知りたいこととのつながりを考えて選びます。

人とのつながりについては、Rajkumarらの2022年の研究が参考になります。LinkedInの知人推薦の仕組みを使った大規模な無作為化実験では、比較的弱いつながりが仕事の移動につながる効果が示されました。

ただし、関係が弱いほど一律によいわけではありません。つながりの測り方や産業によって結果が異なり、強いつながりが役立つ場合もありました。

この結果を、知人数を増やせば必ず成功するという意味に広げることはできません。身近な関係を大切にしながら、異なる経験や情報を持つ人との接点も持つ、という取り入れ方を考えてみましょう。

3.見つけた情報を、次の行動に変える

情報を知っただけでは、具体的な活動につながらないことがあります。気になった情報を見つけたら、「何に関心を持ったのか」「次に何を確かめるか」を短く残してみましょう。

例えば、講座の案内を見た場合は、すぐ申し込む前に、学べる内容、参加条件、日程を確認します。自分の目的に合わなければ、見送ることも判断の一つです。

見つけた情報確認すること次の行動の例
勉強会の案内テーマ、対象者、日程内容を確認して参加を検討する
新しい開発ツール必要な機能、利用条件小さなサンプルで試す
仕事や活動の募集求められる経験、締切条件を読み、応募資料を準備する
知人からの提案目的、自分の役割、必要な時間不明点を質問する

何でも引き受けることを目標にする必要はありません。今の自分に合うかを判断できるよう、情報と行動をつなぐ一段階を作っておきましょう。

4.直感は、確認を始めるきっかけにする

経験を積んだ分野では、説明する前に「この方法がよさそうだ」「何か違う」と感じることがあります。ただし、強くそう感じることと、その判断が正しいことは同じではありません。

KahnemanとKleinの2009年の論文では、直感的な判断の質を考える際、環境に予測可能な規則性があるか、その規則性を学ぶ機会があったかが重要だと整理されています。経験の長さだけで、あらゆる場面の直感が正確になるわけではありません。

日常では、直感を結論として採用する前に、理由や条件を確認してみましょう。「何が気になったのか」「似た経験はあるか」「反対の情報はないか」と問い直す方法があります。

感じたこと確認する問い
この方法はうまくいきそう過去に似た条件で試したことがあるか
この提案には違和感がある説明不足や条件の食い違いはどこか
今すぐ決めた方がよさそう本当に期限があるか、確認する時間はあるか

簡単にやり直せることなら、小さく試して結果を見る方法もあります。影響の大きい判断では、気持ちの強さだけで決めず、条件を調べたり、詳しい人に確認したりしてください。

5.挑戦の回数と、一回ごとの条件を考える

新しいことに取り組む機会を増やせば、経験できることは増えます。しかし、「行動量に比例して運がよくなる」という一般的な法則があるわけではありません。

同じ方法を繰り返しても、相手の求める条件と合っていなければ結果は変わりにくい場合があります。また、時間や費用には限りがあるため、回数だけでなく、一回ごとに何を確かめるかも考えましょう。

例えば、開発したアプリを広めたい場合、投稿回数を増やす前に、「誰に使ってほしいか」「何ができると伝わっているか」「実際に使える状態か」を確認します。反応を見て、説明や届ける相手を調整します。

試す前に、使う時間や費用、続ける条件、見直す時期を決めておくと、次の判断に使えます。これは成功を保証する手順ではなく、試した結果から学ぶための工夫です。

6.うまくいかなかったときは、事実と解釈を分ける

失敗したときに、すぐ「自分は運が悪い」とまとめてしまうと、どこを変えられるかが分かりにくくなります。一方で、無理に「失敗してよかった」と考える必要もありません。

まず、起きた事実を具体的に整理しましょう。「応募に通らなかった」という事実と、「自分には能力がない」という解釈は異なります。不採用の理由が分からないなら、分からないままにしておくことも大切です。

整理する項目記入例
起きた事実応募した活動の選考に通らなかった
分かっていること提出物は期限内に送った
分からないこと選考で何が重視されたか
見直せること募集条件と提出物の対応を確認する
次の行動説明が不足した箇所を修正する

改善できる点が見つかれば、次の行動に反映します。自分だけでは変えられない条件が大きかった場合は、別の機会を探す、計画を変える、いったん休むという選択もあります。

結果が悪かったことを、本人の前向きさや努力の不足だけで説明しないようにしましょう。自分について振り返るときも、他の人の経験を聞くときも、実際の条件を確かめることが必要です。

7.「運のよさ」より、行動の変化を振り返る

日々の記録では、「今日は運がよかったか」という評価に加え、何を知り、何を判断し、何を試したかを残してみましょう。結果がすぐ出なくても、行動の変化を確認できます。

例えば、週末に「新しく得た情報」「確かめたこと」「試した結果」を一つずつ振り返ります。次の表は記録の例であり、この頻度や項目数が最適だと決まっているわけではありません。

振り返ること記録の例
新しく知ったこと別の分野でも使われている開発手法を知った
確かめたこと自分の環境で使える条件を調べた
試したこと小さな機能を一つ作った
次に変えること分かりにくかった設定を整理して試し直す

「自分は運がいい」と言い続けることを、行動の条件にする必要はありません。今の気持ちにかかわらず、調べること、質問すること、小さく試すことから選べます。

まずは気になっている情報を一つ取り上げ、次に確かめることを決めてみましょう。偶然をすべて管理しようとせず、自分が判断できる部分を具体的にしていくことから始められます。

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