教科書の解説を読めば分かるのに、自分で説明しようとすると途中で止まってしまう。学習では、読んで理解できることと、自分で知識を取り出して使えることの間に違いがあります。

その違いを確かめる方法の一つが、「誰かに説明するつもり」で学び、実際に説明してみることです。この記事では、研究で示されていることと、一人でも取り組める手順を、数学やプログラミングの例とともに紹介します。

目次

1.「説明するつもり」で学ぶ効果は研究されている

Nestojkoらの2014年の研究では、文章を学ぶ参加者に対して、「後でテストを受ける」と伝える条件と、「後で別の学生に教える」と伝える条件を比較しました。

実際には誰も教える活動を行わず、全員がテストを受けています。その結果、教える予定だと伝えられた参加者は、文章の内容をより多く、整理された形で思い出すなどの成績を示しました。

ここで確認されたのは、学ぶ前に持つ目的の違いが、文章の学習に影響する可能性です。「実際に授業をすれば、どの教科でも同じ効果が出る」と証明されたわけではありません。

日々の学習では、「この内容を説明するとしたら、何を伝える必要があるか」と考えてみましょう。要点、理由、具体例を意識して読むための、取り組み方の一つとして使えます。

2.「教えると90%定着する」という数値とは分けて考える

説明する学習を紹介する際、ラーニングピラミッドの「講義5%」「読書10%」「他人に教える90%」といった数値が引用されることがあります。

しかし、LalleyとMillerの2007年の検討では、この数値や学習方法の順位を裏づける信頼できる研究は確認できなかったと報告されています。学習方法ごとの定着率を、固定した割合として扱うことはできません。

授業を聞くことや本を読むことも、知らない内容を学ぶための大切な活動です。説明する練習を取り入れる場合も、必要な情報を学び、説明し、元の資料で確かめる流れを作りましょう。

また、「説明できたから完全に理解した」とは限りません。説明の正確さに加えて、問題を解けるか、条件が変わっても使えるかを確認する必要があります。

3.一人で取り組む、説明する学習の4ステップ

ステップ1:テーマと相手を決める

最初は、教科書の一章全体ではなく、一つの用語や例題など、説明する範囲を小さくします。「等差数列の和を求める理由」「繰り返し処理で変数がどう変わるか」といったテーマが考えられます。

説明する相手についても、何をすでに知っているかを想定してください。必ず小学生向けにする必要はなく、同じ授業を受けている友人や、後日読み返す自分を想定しても構いません。

ステップ2:要点・理由・具体例を説明する

資料で内容を確認したら、いったん閉じて、自分の言葉で説明してみます。声に出す、紙に書く、図や式を使うなど、内容に合う方法を選びましょう。

説明では、「何を表しているか」「なぜそうなるか」「どのような例があるか」を押さえます。専門用語を避けること自体を目標にせず、必要な用語は意味とともに説明してください。

ステップ3:資料と照合し、抜けや誤りを直す

説明した後は、教科書や信頼できる資料と比べます。抜けた条件、取り違えた用語、根拠のない説明がないかを確かめましょう。

途中で止まった箇所は、見直す場所を探す手がかりです。ただし、言葉にしにくいことだけで理解不足と決めつけず、図にする、具体的な数値を入れるなど、表し方も変えてみてください。

ステップ4:別の問題や場面で確かめる

説明を直したら、関連する問題を解いたり、例の条件を変えたりして確認します。同じ説明文を暗記するだけで終わらず、その知識を使えるかを試しましょう。

例えば、公式の説明ができたなら、数値や項数を変えて計算します。プログラムなら、入力を変えた場合にも予想どおり動くかを確かめてください。

4.数学の例:等差数列の和を説明する

等差数列の和では、「最初と最後の数を足して、項数を掛けて2で割る」という計算手順だけでなく、なぜ2で割るのかを説明してみましょう。

ここでは、1、3、5、7、9の合計を考えます。同じ数列を逆順に並べ、上下の数を足します。

並べ方1列目2列目3列目4列目5列目
元の順序13579
逆の順序97531
上下の合計1010101010

上下の合計は、どの列も10です。5列あるので全体は50になりますが、同じ数列を2回分足しているため、求める合計は50÷2=25です。

初項をa、末項をl、項数をn、和をSとすると、同じ考え方で次の式が得られます。

$$
S=\frac{n(a+l)}{2}
$$

この説明では、数列を2回分並べ、各列に一つずつ、合計n組を作っています。そのため、項数が偶数でも奇数でも同じように説明できます。

説明後は、「2、5、8、11」など、別の等差数列で確認してみましょう。また、等差数列ではない並びにも同じ説明が使えるかを考えると、公式の条件を確かめられます。

5.プログラミングの例:処理と変数の変化を説明する

プログラムを説明するときは、コードを日本語で読み上げるだけでなく、「入力」「途中の変化」「最終結果」を追います。特に繰り返し処理では、変数の値を表にすると確認しやすくなります。

例えば、合計を表す変数を0で初期化し、1、2、3を順に加える処理を考えます。各段階の値は、次のようになります。

段階加える値処理後の合計
初期状態―0
1回目11
2回目23
3回目36

ここで、「合計を0にする処理を繰り返しの内側に置いたらどうなるか」と問いかけてみてください。毎回0に戻してから値を加えるなら、それまでの合計が引き継がれなくなります。

このように、各行が何をしているかと、処理の順序を変えた場合の違いを説明します。その後、実際に実行した結果と比べれば、自分の予想のどこが違っていたかを確認できます。

6.資料を見る時間と、思い出す時間を使い分ける

資料を見ながら説明することが、すべて無意味な音読になるわけではありません。初めて学ぶ内容では、資料を参照しながら理由を考えたり、図を作ったりすることもできます。

一方、資料なしで取り出せるかを確かめたい場合は、閉じて説明する時間を設けます。学ぶために参照する段階と、覚えているかを確かめる段階を分けてみましょう。

Kohらの2018年の研究では、資料に頼らず教える条件や、思い出す練習をする条件が、用意された説明資料に沿って教える条件などより、1週間後の理解テストで高い成績を示しました。著者らは、教える活動の効果に、思い出す練習が関わる可能性を指摘しています。

ただし、分からない内容を長時間思い出そうとし続ける必要はありません。止まったら必要な説明やヒントに戻り、確認したうえで、もう一度取り組んでください。

7.説明の上手さより、内容を確かめる

滑らかに話せても、前提や条件が間違っている場合があります。逆に、話すことが苦手でも、図や式なら正しく説明できる場合があります。

そのため、発表の上手さだけで理解度を判断せず、次の点を確認しましょう。

確認すること自分への問い
用語の意味言葉を別の言葉に置き換えただけになっていないか
理由結論までの説明がつながっているか
条件いつでも成り立つと言い過ぎていないか
具体例説明に合う例を示せるか
正確さ教科書や実際の結果と一致するか
応用条件の違う問題でも使えるか

説明を録音する、友人と交代で説明する、短いメモを残すなど、取り組みやすい方法を選べます。すべての内容を長く説明しようとせず、理解が曖昧な箇所や重要な概念を優先してください。

まずは今日学んだ内容から一つ選び、説明して、元の資料と照合してみましょう。そこで見つかった疑問を、次に読む内容や解く問題につなげてください。

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