「大学へ進学すると、将来の収入はどのくらい変わるのか」「年収の高い仕事を選べば、生活への満足度も上がるのか」。進学や就職を考えるとき、学歴・収入・働き方の関係が気になる方は多いのではないでしょうか。

学歴別の賃金や、所得と幸福度の関係を調べた統計・研究はあります。ただし、集団の平均的な傾向が、そのまま自分の将来を予測するわけではありません。数字の意味を確認したうえで、学びたい内容、費用、仕事内容、生活上の条件を比べることが大切です。

この記事では、学歴・年収・幸福度に関するデータの読み方と、進学・就職先を比較する手順を整理します。収入も大切な判断材料として扱いながら、自分に必要な条件を具体的にしていきましょう。

目次

1.学歴と収入の関係は、統計の定義を確認して読む

厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」では、学歴別の平均賃金に違いが見られます。まずは、この数字が何を集計したものなのかを確認しましょう。

学歴区分平均賃金(月額)
高校297,200円
専門学校313,700円
高専・短大321,200円
大学396,300円
大学院517,400円

出典は、同調査の「学歴別にみた賃金」です。上表は一般労働者の男女計・年齢計で、2025年6月分の所定内給与額の平均を示しています。概況の集計対象は、常用労働者10人以上の民営事業所で、所定の条件を満たす労働者です。

所定内給与額は、時間外勤務手当などの超過労働給与額を除いた、税などを控除する前の金額です。手取り額や年収、賞与を含む年間の支給総額とは異なり、新卒者だけの平均でもありません。

平均賃金の差は、進学した場合の昇給額ではない

この表は、学歴が異なる集団を比較したものです。同じ人が進学した場合と進学しなかった場合を比べているわけではないため、差額をそのまま「大学へ行くことで増える収入」と解釈することはできません。

年齢、勤続年数、職種、勤務先、雇用形態などの違いも考える必要があります。平均値は全体の傾向を知る材料として使い、実際の進路では、希望する職種の募集条件や待遇を確認しましょう。

生涯賃金の推計も、前提条件で変わる

生涯賃金を比較する資料では、何歳まで働くか、就業を継続するか、退職金を含むかなどの前提を確認します。ある年の平均月額を単純に積み上げても、自分が将来受け取る総額にはなりません。

進学の費用と将来収入を考える場合も、一つの推計だけで結論を出さず、卒業後に目指す仕事や、学費・生活費を含めた具体的な条件を整理してください。

2.大学進学は、学びたい内容と応募条件から考える

大学進学を検討するときは、「大卒なら有利か」という大きな問いを、具体的な職種や学習内容に分けてみましょう。学歴や専攻の条件がある募集もあれば、経験や制作物などが重視される募集もあります。

気になる仕事の採用情報を複数確認し、学位・専攻・資格・実務経験のうち、何が必須で何が歓迎条件なのかを整理します。特定の求人だけを見て、その職種全体に同じ条件があると判断しないことも大切です。

確認すること調べる内容
学習内容授業、演習、実験、研究で何を学べるか
進路との関係希望する職種に必要な知識や応募条件につながるか
学習環境相談体制、設備、研究室、実習などを利用できるか
費用入学金、授業料、教材費、住居費、通学費はいくらか
継続の条件必要な学習時間や生活上の負担に対応できるか

就職実績を見る場合は、有名企業の名前だけでなく、対象年度、学部・学科、職種、集計対象を確認します。大学全体の実績と、自分が進む学科からの進路は分けて見ると判断しやすくなります。

大学院への進学も、学位の名称だけで決めず、取り組みたい研究と修了後の進路を確認しましょう。修士・博士では学習期間や研究内容が異なり、費用と生活の見通しも変わります。

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3.年収と幸福度に、全員共通の境界線はあるのか

「年収が一定額を超えると、それ以上は幸せにならない」という説明を見かけることがあります。しかし、研究で扱う幸福度の測り方や対象者を確認せず、日本の個人年収に共通の境界線を設けることはできません。

幸福度には、人生全体への満足度を尋ねるものと、その時々に感じる気分を尋ねるものがあります。同じ「幸福」という言葉でも、何を測定したのかによって読み取り方が変わります。

Killingsworthらの2023年の研究では、米国で働く成人のデータを再分析し、所得と日々の感情的な幸福度の関係が、幸福度の水準によって異なることを示しました。所得の増加に伴う幸福度の頭打ちは、すべての人に共通する傾向ではありませんでした。

この研究が扱う所得は、税引き前の年間世帯所得です。日本の個人の給与とは条件が異なり、観察された関係だけで「この年収にすれば、自分の幸福度がこれだけ上がる」と予測することもできません。

収入を重視すること自体は、問題ではない

住居費、食費、学費、家族への支援などを考えれば、収入は進路選びの重要な条件です。やりがいや成長機会を重視する場合も、必要な支出を賄えるかを先に確認しておきましょう。

そのうえで、勤務時間、通勤、休み、仕事内容なども比較します。「高年収なら必ず負担が大きい」「好きな仕事なら満足できる」と決めつけず、実際の条件を確かめることが大切です。

4.進学先・就職先を比較する3つの手順

手順1:必要な条件と、希望する条件を分ける

最初に、現在の生活や将来の予定から、満たす必要がある条件を書き出します。費用の上限、通える地域、勤務可能な時間など、具体的に確認できる形にしてください。

次に、学びたい分野や担当したい仕事など、できれば満たしたい条件を整理します。すべての項目を同じ重さで並べるより、優先順位を付けたほうが、候補を比べやすくなります。

手順2:確認済みの情報と、未確認の情報を分ける

募集要項や説明会で確認した情報と、口コミや印象から推測した情報を混ぜないようにします。「働きやすそう」「研究が充実していそう」と感じた場合は、何を確認すれば判断できるかを考えましょう。

例えば、働き方なら配属予定部署の勤務状況、学習環境なら希望する授業や研究室に進める条件を確認します。制度があることと、自分が利用できることは分けて調べてください。

手順3:迷う点を質問に変える

候補の長所・短所を書くだけで決まらない場合は、判断に必要な質問を作ります。「成長できるか」なら「入社後に担当する業務と、指導を受ける機会は何か」と具体化できます。

比較したいこと確認する質問の例
学べる内容希望する授業・演習・研究に参加する条件は何か
仕事内容配属後、最初に担当する業務は何か
収入提示額のうち、固定部分と変動部分はどれか
働く時間通常期と繁忙期では、勤務状況がどう違うか
支援体制困ったとき、誰にどのような相談ができるか
変更の可能性配属・勤務地・履修内容は、どの条件で変わるか

例えばAIを学べる大学を探す場合も、学部名に「AI」が入っているかだけでは判断できません。数学、統計、プログラミング、研究テーマなど、実際のカリキュラムまで確認しましょう。

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5.就職先は、提示年収の内訳と生活への影響を比べる

提示される年収を比べるときは、基本給、各種手当、賞与、残業に関する支給分など、何が含まれているかを確認します。想定年収と、必ず支給される金額を同じものとして扱わないようにしましょう。

また、同じ収入でも、住居費や通勤費、転居の必要性によって生活の条件は変わります。額面の年収だけで判断せず、実際の支出と、生活に使える時間を合わせて整理してください。

次の表は、比較のしかたを示す架空の例です。A社とB社のどちらが優れているかを決めるものではなく、まだ確認すべき点を見つけるために使います。

項目A社の例B社の例
提示年収480万円。賞与の算定条件は未確認450万円。支給内訳を確認済み
通勤時間片道60分片道30分
担当業務希望職種だが、配属は未確定当初の担当業務を確認済み
勤務状況部署別の繁忙期を確認したい通常期は確認済み、繁忙期は未確認
次に行うこと支給条件と配属の決め方を質問する繁忙期の勤務状況を質問する

不明な点を都合よく補って比較すると、入社後の認識のずれにつながります。確認できていない条件を残し、内定先や採用担当者から説明を受けたうえで判断しましょう。

6.進路に迷ったら、小さく試して判断材料を増やす

情報を読むだけでは、学問や仕事への関心を判断しにくいことがあります。公開講座、体験授業、職場見学、インターンシップなど、実際の内容に触れられる機会があれば活用してみましょう。

例えば、プログラミングに関心があるなら、小さな作品を作り、実装や修正を経験してみます。面白いと感じた作業と、難しかった作業を記録すると、次に学びたい内容を具体化できます。

資格学習を試す場合も、資格名だけで決めず、学習範囲が希望する業務とどう関係するかを確認してください。取得後に何ができるようになりたいかを決めておくと、学びを実践につなげやすくなります。

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進路の選択肢は、家庭の事情、地域、費用、募集状況などにも左右されます。希望どおりに選べないことを、本人の努力や考え方だけの問題にせず、学校の進路担当者や相談窓口なども利用しながら、実行できる選択肢を探してください。

7.学歴・年収・キャリアに関するよくある質問

年収を上げるために、大学や大学院へ進むべきですか?

学歴別の平均賃金だけでは判断できません。希望職種の応募条件、学べる内容、進学費用、卒業・修了後の進路を具体的に調べ、他の選択肢と比較してください。

好きな仕事と年収では、どちらを優先すべきですか?

まずは必要な生活費や、働き続けるための条件を確認しましょう。その条件を満たす候補の中で、仕事内容や学習機会などの優先順位を考える方法があります。どちらか一つだけで決める必要はありません。

将来やりたいことが決まっていない場合はどうすればよいですか?

関心のある分野をいくつか挙げ、授業内容や実際の仕事を調べてみましょう。短い体験や学習を通じて、続けたいことと合わないことを確認し、判断材料を増やしていく方法があります。

学歴が高くなければ、選べる仕事は少ないのでしょうか?

応募条件は職種や企業、採用区分によって異なります。学位が必要な募集もありますが、資格、実務経験、制作物などを評価する募集もあるため、希望する仕事の条件を個別に確認してください。

参考資料

賃金の数値は2025年の調査結果、所得と幸福度の説明は2023年の研究に基づいています。いずれも個人の将来収入や幸福度を保証するものではありません。進路比較の表と質問例は、判断材料を整理するために作成したものです。

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