目標を決めたものの、毎週何を確認し、どの仕事を優先すればよいのか分からない。反対に、行動件数は達成しているのに、売上や契約などの成果につながらない。目標管理では、このような問題が起こることがあります。

KGIとKPIを使うときは、目指す成果、途中で確認する指標、実際に行う仕事を分けて整理することが大切です。この記事では、体験サービスの申し込みを例に、指標の設定からスケジュールへの落とし込み、振り返りまでを解説します。

目次

塾講師K5の学習準備室

1.KGIとKPIの違いは、何を確認するための指標か

KGIは「Key Goal Indicator」の略で、重要目標達成指標と訳されます。KPIは「Key Performance Indicator」の略で、重要業績評価指標と訳され、事業や業務の状況を評価するために選ぶ重要な指標です。

この記事では、KGIを目指す成果の達成状況を確認する指標、KPIをその成果に向かう進捗や業務の状態を確認する指標として整理します。ただし、KPIは行動件数だけに限らず、途中段階の成果や品質を表す指標も含みます。

項目役割体験サービスの例
目的何のために取り組むかサービスを必要とする人に利用してもらう
KGI目指す成果の達成状況を測る新規契約者数
KPI進捗や業務の状態を測る問い合わせ人数、体験予約率、参加率
行動計画誰が何をするかを決める体験日程の案内を改善し、予約手順を確認する

指標と目標値を分けて書く

「新規契約者数」は指標であり、「次の四半期に20人」は、その指標に対する期限付きの目標値です。何を測るかと、どの水準を目指すかを分けると、実績を比較しやすくなります。

また、「体験予約率を上げる」は方向性であり、具体的な作業ではありません。「候補日が分かりにくいという問い合わせを整理し、案内ページを修正する」のように、行動へ置き換える必要があります。

2.KGIは、期限・対象・数え方まで決める

KGIを設定するときは、目標値に加えて、集計する期間と対象を明確にします。「契約20件」だけでは、継続契約を含むのか、同じ人の複数契約をどう数えるのかが分かりません。

例えば、「次の四半期に契約が成立した新規利用者を20人。1人1回で集計する」と決めます。キャンセルを反映する時点なども、実際の業務に合わせてそろえてください。

決める項目記入例
指標新規契約者数
目標値と期限次の四半期に20人
対象対象サービスを初めて契約した利用者
集計方法契約成立日を基準に、1人1回数える
データの取得元契約管理台帳
集計担当運営担当者

目標値は、過去の実績、季節性、使える予算、対応できる人数などを踏まえて検討します。過去のデータがない場合は、仮の目標であることを共有し、何を確認したら見直すかも決めておきましょう。

契約者数だけを追うと、無理な勧誘や対応品質の低下を見落とすおそれがあります。問い合わせへの対応状況や利用開始後の困りごとなど、目的に反する変化が起きていないかも確認してください。

3.成果までの流れを分け、KPIの候補を選ぶ

KGIが決まったら、その成果に至る流れを書き出します。体験サービスなら、「問い合わせ」「予約」「参加」「契約」という段階に分けると、どこを確認すべきか考えやすくなります。

以下は説明用の架空のデータです。同じ100人の問い合わせ者について、一定の追跡期間を設け、予約・参加・契約の結果を確認できたものとします。

段階人数前の段階からの割合
問い合わせ100人―
体験予約60人60÷100=60%
体験参加48人48÷60=80%
契約12人12÷48=25%

この例では、「100人×60%×80%×25%=12人」と整理できます。各段階の対象者が対応しているため、最終的な契約者数と途中の割合を結び付けられます。

ただし、「今月の問い合わせ人数」と「今月の契約者数」をそのまま割ると、先月以前に問い合わせた人の契約が混ざる場合があります。同じ人たちを追う割合と、各月に発生した件数は、区別して管理してください。

逆算した数値は、達成の保証ではない

仮に、問い合わせ125人、予約率80%、参加率80%、参加者の契約率25%なら、計算上は20人の契約になります。しかし、これは条件を置いた計画であり、それぞれの数値を実現できる根拠が別に必要です。

問い合わせを増やすと利用者の構成が変わり、予約率や契約率が下がることもあります。数式として分解できることと、一つの指標を改善すれば成果が増えるという因果関係は、同じではありません。

数字が低い場所だけでなく、改善できる理由を見る

予約率が低く見えても、対象外の問い合わせが多いのか、日程が合わないのか、案内が分かりにくいのかで対策は変わります。未予約の理由や問い合わせ内容も確認しましょう。

GOV.UKのサービス設計ガイドでも、サービスの目的から改善の仮説を立て、測定する内容を選ぶ流れが示されています。数字だけでなく、利用者への調査などを組み合わせて判断する考え方が参考になります。

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4.KPIは、測定方法と判断に使う場面を決める

KPIを選ぶ際は、「その数値が変わったら、何を確認するか」を説明できるか考えます。集計できるという理由だけで増やすと、報告の手間が増え、重要な変化を見つけにくくなります。

主要な指標を少数に絞ることは役立ちますが、必ず3つ以内に収める必要はありません。定例で確認する指標と、原因を調べる際に見る詳細データを分けて管理しましょう。

指標の役割例判断に使う場面
集客の状況新規問い合わせ人数募集案内や流入経路を見直すか
途中段階の成果体験予約率日程や予約手順に問題がないか
行動の実施状況期限内に初回返信できた割合担当配置や返信手順を見直すか
品質や負担未対応件数、対応時間、困りごとの内容件数を増やす前に運営体制を調整するか

割合には分母と分子を添え、未集計とゼロを区別してください。「予約率50%」でも、2人中1人と100人中50人では、判断の材料となる件数が異なります。

また、担当者が影響を与えられる範囲も確認します。市場の変化や設備の制約など、本人だけでは変えられない条件があるため、KPIの未達をそのまま努力不足と判断しないようにしましょう。

5.KPIを、担当者・期限・作業内容のある計画へ落とし込む

指標を決めた後は、改善のために何をするかを具体化します。「予約率を上げる」と予定表に書くのではなく、調査、修正、確認といった実行可能な仕事に分けてください。

例えば、予約前の問い合わせに「空いている日が分からない」という声があるなら、日程の案内を見直す候補になります。以下は、その作業を管理するための記入例です。

作業担当の例期限の例完了条件
未予約の理由を整理する受付担当火曜日記録から理由を分類し、不明なものも分ける
日程案内を修正するページ担当木曜日候補日と申し込み手順が確認できる
予約操作を確認する運営担当公開前スマートフォンを含め、完了まで操作できる
変更後の状況を確認する責任者次回の定例件数と問い合わせ内容から、継続・修正を判断する

必要な作業には、カレンダー上でも時間を確保します。これをタイムブロッキングと呼ぶことがありますが、全員が午前中に重要作業を置く必要はなく、勤務時間や集中しやすい時間帯に合わせて調整しましょう。

割り込みに備える時間も、業務の実態から見積もります。一律に20%空ければ十分と考えず、問い合わせ対応などに実際どれくらい時間がかかっているかを記録して、予定を組み直してください。

毎日行う必要がない仕事まで、日次の件数目標にする必要はありません。業務の周期に合わせて週単位や月単位で管理し、準備が必要な仕事は、その準備から予定に入れます。

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6.振り返りでは、未達の理由と次の行動を決める

定例では、目標との差を報告するだけでなく、どの段階で想定と違いが出たかを確認します。行動が実行されなかった場合と、実行したのに結果が変わらなかった場合では、必要な対応が異なります。

確認する頻度は、数値が更新される速さと、成果が出るまでの期間に合わせてください。問い合わせ対応は短い周期で確認できても、その問い合わせが契約につながったかの評価には時間が必要な場合があります。

確認する順番問い
1.データ記録漏れや集計条件の変更はないか
2.行動予定した作業は実行されたか。止まった理由は何か
3.途中の変化KPIはどう変わったか。件数や利用者の構成も変わったか
4.成果と影響KGIへの変化は確認できるか。品質や負担に問題はないか
5.次の判断継続、修正、中止、追加調査のどれを行うか

KPIだけが改善した場合は、成果とのつながりを確かめる

予約数は増えたのに契約が増えない場合、参加率や契約までの時間差などを調べます。予約を増やすことだけが目的になり、利用者に合わない案内をしていないかも確認してください。

また、成果につながると考えた仮説自体が、適切でなかった可能性もあります。行動件数を増やすだけで対応せず、指標の選び方やサービスの提供条件を見直しましょう。

目標や指標を変える場合は、変更理由を残す

前提となる予算や人員、提供内容が変わった場合は、目標を見直す必要があります。その際は、変更前の数値と変更日、理由を残し、関係者で共有してください。

未達を見えなくするために過去の目標を書き換えると、何を学んだかが分からなくなります。「当初の目標に対する結果」と「次に採用する計画」を分けて記録しましょう。

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7.KPI・KGIの設定に関するよくある質問

KPIを達成すれば、KGIも必ず達成できますか?

必ず達成できるとは限りません。選んだKPIが成果の一部しか捉えていない場合や、外部環境、利用者の構成、成果が出るまでの時間差などが関係する場合があります。

KPIは、目標に向けた判断を助ける指標として使います。KGIと併せて確認し、つながりが弱ければ、指標や行動計画を見直してください。

KPIは、多いほど細かく管理できますか?

指標を増やすほど、集計と確認の負担も増えます。それぞれの数値を何の判断に使うのかを説明できない場合は、主要なKPIに含める必要があるか見直しましょう。

一方、原因を調べるための詳細データまで削除する必要はありません。普段確認する項目と、問題が起きたときに調べる項目を分けると整理しやすくなります。

目標未達のときは、行動量を増やすべきですか?

行動量が不足しているのか、方法や対象が合っていないのかを先に確認します。担当者が対応できる範囲を超えて増やすと、返信やサービスの品質が下がるおそれもあります。

必要な情報、担当配置、作業手順、本人のスキルなどを確認し、改善する場所を選びましょう。未達の数値だけから、追加の件数目標を決めないことが大切です。

専用の管理ツールは必要ですか?

小規模な取り組みなら、表計算ソフトなどで始められます。指標の定義、目標値、実績、集計日、担当者、次の行動が共有できれば、基本的な運用は可能です。

ツールを増やす前に、誰が更新し、どの会議で判断に使うかを決めてください。入力したまま見られない管理表を作らないよう、実際の仕事の流れに組み込みましょう。

8.最初は、一つの目標と次の確認日を決める

KGIとKPIを設定するときは、まず目指す成果を一つ選び、期限と数え方を明確にしてください。次に、成果までの流れを整理し、どの段階を改善するか、そのために何をするかを決めます。

指標は、決めた時点で完成するものではありません。実績と現場の状況を照合し、次の行動を選ぶために使いながら、取り組みに合う形へ調整していきましょう。

参考資料

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